【文スト】私が絶対に決まってるだろう？【太宰治】

出逢い ページ39

〈太宰side＞

二手に分かれたは善いけれど。

…はぁあー遣る気出ない。

Aと離れるなんてもう私死んだも同然なのだけど？

其れにしても…可愛かったなぁ。

冷静な塩対応だったけど、内心照れていた事を私は知っている。

只、今は不安が勝っている。其れだけの事だろう？

彼女は、無事だろうか。

何の音もしないせいで、安否の確認すら出来そうにない。

気付いてたのか否か、何時も着ている彼女のコートに仕掛けた盗聴器。

其れは探偵社の音を拾っている。

でも彼女の異能は、強い。

何があっても大丈夫だとは思っているけれど。

少しでも危険な目にはあって欲しくない。

入社したての頃に早々心中を申し込んだ私も私だけどね。

嗚呼、Aは気付いているだろうか。

まぁ、乱歩さんあたりなら気付いてるかもしれないね。

私が彼女だけ呼び捨ての理由(わけ)に。

実は私たちが初めて逢ったのは、彼女が探偵社の入社を希望した時じゃあない。

尤も、あの子は憶えてないかもしれないけどね。

私がポートマフィアだった時。森さんに拾われて一年後くらいだったかな。

私はいつも通りに、任務で人を殺めた。

その現場で、彼女に出逢った。

迚も綺麗な瞳だった。全てを見透かすような栗色。

ふわりと風に靡くゆるい癖っ毛。

その時私は、彼女しか見えなくなっていた。

一度目が合った、それだけで、私の中の歯車が加速する程に。

何故あの場所に彼女が居たのかは判らない。

只、今にも涙が溢れ出そうで。

私と違い、濁りのないその瞳は、涙で輝いていた。

…本当はその建物に居た者は皆殺しの予定だったのだけれどね。

私には、出来なかった。

最早行列で意味の無い暗殺部隊と、血に塗れた私と、床に転がる誰かの亡骸と。

そのいずれを見ても、彼女は其処に立った儘、無惨に殺された一体の屍を眺めているだけだった。

殺さないでと訴える訳でも、泣き叫ぶ訳でも、逃げ出す訳でも無く。

唯、その一体を。

後に知った。其れは彼女が異能で殺してしまった、かつて友人だったもの、と。

ポートマフィアで、一度彼女を引き取った。

精神操作の異能力であったため、森さんが確り監視をつけていた。

然し、いつのまにかAは、煙の様に消えていたという。

その短期間、私と彼女は友人だった。

「治くん」と呼んでくれた。

初めて、消えたと聞いた日には、もう何も手に付かなくて。






…漸と手に入ったんだ。守るよ。




________仮令、何があってもね。

銃声→←静寂

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