【文スト】私が絶対に決まってるだろう？【太宰治】

完全密室 ページ31

〈乱歩side〉

暗い。ここは何処だ？

視界から得られる情報が少な過ぎる。

おかげで僕にも何も解らないじゃあないか。

其れに、社長が呉れた眼鏡も無い。

更に、靴を履いている感覚が無い。裸足みたいだ。

暫くして、目がこの暗闇に順応してきた。

天井には剥き出しの鉄パイプ。

床は冷え切ったコンクリート。

時間の問題もあるのかもしれないが、少しも差し込んでいない光。

窓一つない事が伺える。


「…地下だ。」


目を凝らすと、僕の向かいに扉がある事を確認する。

何だ。随分とお粗末な造りじゃん。

立ち上がって一歩踏み出すと、足元でジャラリと音がする。

金属どうしが擦れている。そんな印象を受ける。

成る程。足枷だ。

此れだと、仮に扉が開いても外には出られなそうだ。

然し、行動してみる事は大切だ。

以外と小さな部屋らしく、六歩進んだ所で扉に触れる事が出来た。

この冷たさ、鉄製だね。

彼方此方触れて確かめるも、如何にも可笑しい。

ノブが無い。

そうなると…外から閂を掛けられている可能性が高いな。

一言で云えば、完全密室。

中からはほぼ百％出られないと考えるのが妥当。

真逆、金庫の中とか無いよね。


「却説と…犯人の動機は何だ？」


名探偵に、不可能は無い。

一人、心の中でポツリと呟く。

待っていても、直に太宰とAが来るだろう。

あの二人は思考力に長けている。

まぁ、僕には及ばないけどね！

寶、待っている必要なんて無い。

扶けが来る前に、こんな所出てってやる。

"確りしろ、乱歩。"

社長の声が、聞こえた気がした。

砂色→←昨夜

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