第六話 ページ7
「Aさーん！ 待ってくださーい！」
歩き出す私の後ろをついてくるシンは、待たない私に戸惑いながら隣を歩く。足を止めると足を止め、中庭に出ると中庭に出る。
「……なんでついてくるの」
「さっきのプリズムショー、すっごくかっこ良かったです！ どうやったらあんな風にジャンプが飛べるんですか？！」
「…………」
何を言われたのかわからなくて、私は一瞬言葉を失った。シンはあんなにすごいショーをしたのに、私のどこを見て一体何を言っているのか。
「心の煌めきがあれば誰でも飛べるでしょ」
だから私は飛べないんだけど。
「心の、煌めき……！」
たいしたことは言ってないのに、キラキラと瞳を輝かせて私の話を聞くシンは純粋無垢だった。だからシンは飛べたんだろうけど。
「そういうことだから、頑張って」
「はいっ！ よーし、やるぞー！」
シンはぐっと手を握り締めて、笑った。その笑顔が眩しくて、誰よりも煌めきに満ち溢れていた。
さっそく練習しようと思ったのか、中に戻っていくシンの後ろ姿をただ黙って私は眺める。そして、ユキが出てくる姿を目撃した。
「A」
「ユキ、何？」
ユキの名前は長いから、私は省略してそう呼んでいる。ユキは軽く顎を引き、「大丈夫だったのか」と尋ねた。
「そんなにヤワじゃないから」
「シンは何も知らない。俺たちから話すつもりは一切ないが、早めに教えておいた方がいいんじゃないか？」
「別に。聞かれたら自分からちゃんと話す」
「そうか」
ユキは頷き、安心したように微笑んだ。ユキにはこうして何度も心配をかけさせている。ミナトもカズオもそうだけど、同級生なのにどうしてこんなにも私のことを心配するのだろう。
「あれ、A。ユキノジョウ」
「ヒロ？ おかえり」
「おかえりなさい、ヒロさん」
「珍しい組み合わせだね。もしかして邪魔しちゃった？」
ヒロはそう言って笑っているけど、コウジの件についてどう思っているんだろう。私の好きな人だって知っているくせに、そうやってからかうのも昔から腹が立つ。
「そっ、そういうのではありません！」
上ずった声で否定したユキを笑って、ヒロは中へと戻っていった。私はため息をついて外に足を向ける。
「出かけるのか？」
「うん」
「気をつけるんだぞ」
「わかってる」
そうして向かった場所は、いつもの高架下だった。
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はら - オリジナルフラグ外し忘れていますよー違反行為なのでちゃんと外して下さいねー (2018年5月18日 10時) (
レス) id: 0ab2a8dc70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鬼童輪廻 | 作成日時：2018年5月17日 20時
