その色は ページ34
人に聞けばわかると思った。
けどその考えは間違いだった。
人は怖いもの。
中也に会うまでそうだと思ってた。でも会ってから忘れていた感覚。
見ず知らずの人に声をかけるなんて出来るわけないし、やっぱり心のどこかでまだ自分と人間を区別してるみたいだ。
だってこんなにも人が怖いんだもん。
流れ行く川を見ながら歩いていると目の前にあった小さな段差に気づかず盛大に転んでしまった。
「大丈夫…?」
差し伸べられた手を辿ると赤色が揺らぐ紫の瞳が此方を見ていた。
綺麗な人……。
貴方「大丈夫、です。ありがとうございます」
手をそっと掴んで立ち上がると目の前の女性はよかった、と優しく微笑んだ。
この人なら話せるかも……。
貴方「あ、あの……。私人を探してて、その、えっと……」
「誰?僕が知ってる人なら教えてあげられる」
僕?女の人で僕っていうの珍しい。
もしかして女の人じゃないのかな……。
貴方「太宰って人を探してます……」
「太宰治?」
貴方「知ってるの……?」
「知ってる。ここにいればもう時期来るよ」
貴方「……え?」
ここって橋の上ですけど……?
「じゃあね、僕帰って夕飯の支度しなきゃいけないから」
それだけ言って女性は行ってしまった。
あ、名前聞けばよかったな……。
お礼も言いそびれちゃったし……。
とりあえず待っててみよう。
それから三十分が経った頃だろうか。
突然後ろから話しかけられた。
「やぁ。君かい?人を探してる子っていうのは」
貴方「え……?そうだと思います……」
話しかけてきた男性は砂色の外套を着ていた。腕や首から包帯が見え隠れしている。変わった人。
貴方「もしかして……!あなたが太宰治……?」
「そうだよ。私が君の探してる太宰治だ」
本当に会えた……。
太宰「探してるってことは私に何か用があるんだろう?」
貴方「はい、実は」
太宰「何処か座ろうか。ずっと立っていて疲れただろうしね」
そう言って太宰さんは私を連れて歩いてすぐの所にあったカフェに入った。
広くはない。けど、昔ながらの感じがあって嫌いじゃない。
太宰「それで、何故私を探してたんだい?」
目が怖い。
全てを見透かされてるみたいだ。
黒より黒い。昔、誰かがそう例えていた。
あの時は変な例えだと思った。
でも今ならわかる。これは黒なんかじゃない闇の色だ。黒より暗くて重い世界の底の色。
太宰治、聞いていた以上に恐ろしい人間かもしれない。
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紅野(プロフ) - ソリバさん» いつもありがとうございます…!続編になりそうな気もしますが、もう少し考えてみますね。 (2017年11月7日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
ソリバ(プロフ) - いつも楽しみにしてます!できれば続編お願いします!! (2017年11月7日 14時) (レス) id: c80ce2fe4d (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - ニャン将さん» ありがとうございます!もう少し検討させてもらいますね…! (2017年11月6日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 埃さん» いい作品だなんてありがとうございます…!何ででしょう… (2017年11月6日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
ニャン将(プロフ) - 続編希望します!! (2017年11月6日 18時) (レス) id: a5f5e3b412 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅野 | 作成日時:2017年9月2日 16時