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言わないで×8 ページ10

それから彼にちゃんとした銃の使い方やマフィアでの仕事の仕方など色んなことを教えてもらった。
そんな日々を過ごしているうちに気付けばもう十六歳になろうとしていた。
私の仕事は主に暗殺だった。
死体のあった場所に羽根が落ちている事から『白い殺人鬼』『血濡れた神の使い』と呼ばれる事が増えた。時にはマフィアには堕天使がいるのではと噂される事もあった。
人を殺せば殺す程ノワールの羽根は黒くなっていった。彼曰く、天使が人を殺める事が罪だからだそうだ。


そんなある日、偶然会ってしまった。

「やぁ」

貴方「……何」

太宰治。一番会いたくない人。
一番覚えていてほしかった人。
今まで私を生かした人。
同じ所にいるのにマフィアに入ってから彼にあったのは初めてだ。

太宰「何って元気かなぁと思ってね」

貴方「関係ない」

太宰「なくないよ。……君、人を殺したんだってね」

貴方「だったら何。私も暇じゃないの」

太宰「籠の中を全てだと勘違いして、飛び方も知らない鳥だった君が、ね。聞いた時は耳を疑ったよ」

目の前の彼は昔の様に辛そうに笑った。
それはどう見ても私の大好きな、否、大好きだった兄の表情そのものだった。
居ないと絶望までした彼の人は今目の前にいる。
出来るのなら今すぐにでも抱き締めて欲しかった。
でも彼はそうしない。わかってる。彼はそういう人だ。

貴方「そうでもしないと気が狂いそうだったの。外に憧れたから籠を壊したまでの話よ。……もういいでしょ」

歩き出した私を彼は止めなかった。
別に止めて欲しかったわけじゃない。
でもそうしてくれれば少しは許せたかもしれないのに何もしてくれなかった。
自分の足音に重なって違う足音が響く。
そんな中ごめんね、と聞こえた気がした。
振り返った先にもう彼はいなかった。



家に帰るとテーブルの上に置き手紙があった。
『今日は帰りが遅くなる』
ただそれだけ書かれた手紙。
織田さんらしい。
多く語らない。
それが私にとって何よりも救いで、何よりも愛に感じた。

織田さんが遅くなると言う日は決まって誰かと飲んで来る日だ。
前に聞いた時は友人だ、とだけ言っていた。
その友人に太宰が含まれてなきゃいいんだけど。
まぁ幹部候補とただの構成員じゃ無理があるか。

そんな事を呑気に考えながら私はまた家を出た。




織田さんがいなくなるまでもうそんなに時間がないことも知らずに。

言わないで×9→←言わないで×7



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設定タグ:文スト , 太宰治 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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アミ - この作品、すごく面白かったです!!更新頑張ってください! (2020年4月8日 11時) (レス) id: 808cf034c3 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - モクズノドウケシさん» ありがとうございます…!掛け持ちしてるせいで更新かなり遅くなってしまいましたがここからまた頑張ります! (2019年1月5日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
モクズノドウケシ(プロフ) - 織田さんの出した最後の正しい道……。感極まります……、続きだ。嬉しい。更新頑張って下さいね! (2019年1月5日 13時) (レス) id: fd101bcda6 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - ジブリールさん» ありがとうございます!ゆっくり更新ですが頑張ります…! (2017年12月27日 13時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
ジブリール - 続きが凄い気になります!更新待ってますね! (2017年12月24日 22時) (レス) id: 41cfeef620 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2017年10月8日 22時

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