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四十五言目 ページ49

その後、私のほぼ無謀な挑戦を中也は否定しなかった。
自分でも無理だとは思うし、彼に迷惑をかける事はわかりきってる。
でもやってみなきゃ。
いつまでも先生の残像に縋ってる自分は嫌だ。
それに私も先生みたいに誰かに必要とされてみたい。
まぁそこまでは言わないにしても、もう少し何か自分にしかできない事を探したい。

そんなことを考えながらぼーっといちごミルクを飲んだ。
風呂上がりのいちごミルクっていいよね。美味しい。

「何してンだ?」

お風呂から上がったばかりの中也は私の咥えていたいちごミルクを取った。

貴方「返してよ。考え事してんの」

中也「美味いな」

私の飲みかけを一口飲んで彼は楽しそうにそう言った。
そういう事自然にやってくる所が心臓に悪い。
付き合ってるからいいだろとかそういうのではなく、ただ単に私が恥ずかしい。

貴方「ちょっとぉ」

中也「ンな騒ぐ程飲んでねェよ」

ほら、と私に返して隣に座った。
まだ髪濡れてる。
普段見慣れない首筋にくっつく長い襟足が妙に厭らしくて見ているだけで可笑しくなってしまいそうだった。

中也「何だよ」

貴方「い、いや、いや、いやぁ?何でも、ないよ」

中也「おかしいぞ」

ふっと笑う彼は絶対気づいててやってる。
表情があり過ぎて頭が追いつかない。
この人同姓同名の中也の兄弟とかじゃないよね。
兄弟で同じ名前の人なんていないか。

貴方「……気のせいだよ」

中也「そういう事にしといてやる」

横から私の頬を撫でる彼は見たことないくらい優しい表情をしてた。
こんな人だったんだ…。
おかしいのは私じゃなくて中也だ。
突然別人と勘違いする程態度変わるんだから。

中也「……接吻、させてくンねェの?」

貴方「…へ?」

中也「もう十分我慢しただろ」

先刻とは打って変わって今度は寂しそうに真っ直ぐ私を見て言った。
頭が追いつかない…。

貴方「私が良いよって言うの待ってたの?」

中也「突然すンのは嫌だろ?」

私の事沢山考えて行動してくれてるんだな。
やっぱり凄く嬉しい。
今までずっと好きだった人だから余計に。

貴方「もっと早く聞いてくれれば良いよって言ったのに」

中也「今は駄目か?」

貴方「良いよ」

ただそれだけ言えば彼は嬉しそうに私を抱き寄せた。
黙ってされるがままに接吻を受け入れると、彼は指を絡め、何度も何度も私の身体に接吻を落とした。

貴方「中也、わかってるよ。好きなのは」

中也「言葉何かじゃ足りねェよ」



嗚呼、愛されてる。

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設定タグ:文スト , 中原中也 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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紅野(プロフ) - お白湯さん» コメントありがとうございます。やっぱり同じになる人多いですよね。いつも名字つけようか迷ってつけるのですが読む人にとったらどうなんでしょうか……。 (2019年1月13日 22時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
お白湯 - 夢主ちゃんの名字が、私の本名の名字と読み方違うだけでびっくりしました(笑) (2019年1月13日 1時) (レス) id: fa6e0c5cd0 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 聖宮さん» ありがとうございます!頑張って書こうと思います! (2018年10月1日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
聖宮(プロフ) - 寧ろ書いて欲しいです、続編楽しみに待ってます! (2018年10月1日 20時) (レス) id: 956436ae5b (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 月詞さん» ありがとうございます!いつもゆっくり更新ですが頑張りますね! (2018年9月28日 19時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2018年4月15日 0時

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