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四十四言目 ページ48

中也「それは……」

貴方「何?」

聞き返しても彼は暫く目を逸らしたまま何も言わなかった。
やっと動いたかと思えば私を抱きしめて小さな声で言った。

中也「……悪かッた」

貴方「何が?何も悪い事してないでしょ?」

中也「俺があの日あの部屋に入らなかったとしたら手前の先生は生きてたかもしれねェ」

どうしてそんな話……?

中也「手前がこんな所で使われてンのも、先生の事で思い詰めンのも、苦しむのも全部、俺と太宰があの日あの時間にあの部屋に乗り込んだせいだ」

あぁ。自分が悪いと思ってるんだ。
だから私が何やっても怒りはしないんだ。
自分のせいで私の人生を真逆の世界で染める事になったと思ってるから。

中也「悪かった。手前に先生を返してやる事はできねェが、償う事は出来ると思ってる」

貴方「ねぇ、中也。その罪悪感で私と付き合ってるの?」

もしそうだとしたらそれは苦しいだけだ。
そうなんだったら彼が目に入らない所で仕事したいし、生活をしたい。苦しいから。
何ならこの機会に死んでしまいたい。

貴方「もしそうならそんな愛いらないよ。それが償いだと思ってるなら」

中也「思ってねェよ。本当に好きだから付き合ってンだ。これは嘘じゃねェ」

貴方「……なら良かった」

そういえば太宰も事ある毎にごめんね、と言っていた。
もしかしてそれも中也と同じ罪悪感からだったのかな……。

貴方「中也、運命は変えられないよ。確かに先生がどこにもいないのは辛いし苦しい。でもね、私がどれだけ泣いても、自傷行為をしても、中也が謝っても、先生は返ってこない。理解してるつもりでも本当は否定したくて堪らないの。だからね、もし本当に悪いと思ってるならただ傍にいて。でも中也も太宰も悪くないよ。どの道、先生は私と一緒にいたら殺されてたと思うから」

次々と言葉が並んでいく。
それくらい本当はこの世にもう身寄りがない事が怖い。
中也だってないけど、私は彼と違って家庭らしいものを知ってしまってる。だからないと怖い。
正直、初めて此処に連れてこられた時は怖かったし、本気で死にたいと思った。
でも不思議と私を無理矢理連れて来た太宰の事は嫌いじゃなかった。
先生のかわりにはなれないけど、それに似た立場になってくれる気がしたから。
なのに彼は私を置いて行った。生かしたまま。
今傍にいてくれるのは中也だけだ。
勿論首領達もいるけどちょっと距離が違う。
中也の傍は生きやすい。何だか先生に似てるから。

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設定タグ:文スト , 中原中也 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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紅野(プロフ) - お白湯さん» コメントありがとうございます。やっぱり同じになる人多いですよね。いつも名字つけようか迷ってつけるのですが読む人にとったらどうなんでしょうか……。 (2019年1月13日 22時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
お白湯 - 夢主ちゃんの名字が、私の本名の名字と読み方違うだけでびっくりしました(笑) (2019年1月13日 1時) (レス) id: fa6e0c5cd0 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 聖宮さん» ありがとうございます!頑張って書こうと思います! (2018年10月1日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
聖宮(プロフ) - 寧ろ書いて欲しいです、続編楽しみに待ってます! (2018年10月1日 20時) (レス) id: 956436ae5b (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 月詞さん» ありがとうございます!いつもゆっくり更新ですが頑張りますね! (2018年9月28日 19時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2018年4月15日 0時

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