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十八言目 ページ21

中也side

任務に向かう車の中、隣で外を見るAの横顔を見て昔のことを思い出した。



太宰がマフィアを抜けた後、Aは人が変わった様に荒れた。
朝から酒を飲み、酔い潰れた儘川に入ってみたり、腕を切ってみたり、ビルから身投げをしてみたり。
まァどれも上手くいかないか、俺が止めるかで今此奴は生きてる訳だが。

別にAは酒好きではない。強いタイプではあるが、好んで飲む事はあまりない。嗜む程度だ。
それがあの時は本当に浴びる様に飲んでいた。それだけでも俺や首領や姐さんはどうしたものかと頭を抱えた。
だがそれだけでは終わらず、自 殺願望は強くなり、やる事もエスカレートしていった。
そんな時に強引でもあったが愛用していた銃を取り上げた。そうでもしないとそれを使って死にそうだったからだ。

何故荒れたか。
初めこそ悩んだが、結局は簡単なことだ。
太宰の隣がAの居場所だった。
『歴代最年少幹部の補佐兼秘書』
これがAの肩書だった。
だが、太宰がいなくなったことで自分の存在できる場所を失った。Aをこの世界に連れて来たのは太宰だ。
太宰という存在が生きる理由でもあったのかもしれない。
芥川とはまた違うがAにも彼奴が必要だった。
生きる理由を失って、自分を見失って、居場所も、全てを委ねられる人も、受け入れてくれる人も失った。
それが原因だ。




深海の様に光の無い眼、どんどん痩せて傷の増えていく身体、人形の様に空っぽになった心。
見ていて可哀想だとも思えるくらいに荒れ、狂っているとも言えるくらい人や物を拒否し、拒絶し、死を望んでいた。




その時に比べれば今の彼女は随分と健康的になった。
やっと整理がつき、今の仕事に満足しているのだろう。


貴方「何?」

中也「いいや」

貴方「ふーん。そう」

偶に目を擦り乍らまた窓の外に視線を移す。
その眼はマフィア独特の黒はあるものの、確りと生きていた。

中也「……早く終わらせて寝ろ」

貴方「情報の整理終わってないし、二日三日寝なくても何ともないよ」

稀に見る彼女の思い詰めた様な眼。
昔から気分の上がり下がりが激しい方ではあった。
だから不思議ではない。でも普段は何も無いのにこんなに暗い視線を落としていることはない。


何があったんだ。



俺じゃどうにもできないんだろうか。
Aに必要なのは別の誰かなんだろうか。





もしかしたら、Aの中で俺は彼氏なんかじゃないのかもしれない……。

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設定タグ:文スト , 中原中也 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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紅野(プロフ) - お白湯さん» コメントありがとうございます。やっぱり同じになる人多いですよね。いつも名字つけようか迷ってつけるのですが読む人にとったらどうなんでしょうか……。 (2019年1月13日 22時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
お白湯 - 夢主ちゃんの名字が、私の本名の名字と読み方違うだけでびっくりしました(笑) (2019年1月13日 1時) (レス) id: fa6e0c5cd0 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 聖宮さん» ありがとうございます!頑張って書こうと思います! (2018年10月1日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
聖宮(プロフ) - 寧ろ書いて欲しいです、続編楽しみに待ってます! (2018年10月1日 20時) (レス) id: 956436ae5b (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 月詞さん» ありがとうございます!いつもゆっくり更新ですが頑張りますね! (2018年9月28日 19時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2018年4月15日 0時

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