十二言目 ページ15
中也side
人の気配がして目が覚めると隣から助けて、と小さく何度も叫ぶ声が聞こえた。
怠く重い身体を上げてみるとAが座り込んでいた。
その顔は血の気が無く真っ白でまるで病人の様だった。泣き乍ら助けてと小さく言い続ける彼女は震えていた。
中也「どうした。しっかりしろ」
抱き寄せてやると震える手を俺の背に回した。
この光景、知ってる。
見た事がある。
昔、太宰にこうしていた。後々太宰に聞くと、理由もなく怖くなった事が怖くなって、と訳もなく泣き出すらしい。
きっとそれだ。
原因は疲れとか寝不足とからしい。対処法はただ声を掛けてやり乍らAの意識が落ち着くのを待つしかない。
中也「A、落ち着け。大丈夫だ。怖くねェよ」
ゆっくりと声を掛けると手の震えが収まっていく。
髪を撫でてやり乍ら今日は休ませた方が良いのかも知れないと思考を巡らせた。
いや、Aの場合休ませる方が逆効果かもしんねェな。
というのは此奴の過去に色々ある訳だが、今は置いとく。
貴方「……中也?」
中也「ん、どうした?」
貴方「ごめん、もう、大丈夫」
そう言って俺から離れた彼女は先刻よりはマシになったもののまだ顔色は悪かった。
ぼーっと何処かを見つめる彼女を見ているとふと首筋についてる赤い痕が目に入った。
中也「お前、それ……」
貴方「え、あぁ、何でもないの」
慌てて隠そうとする手を掴んでその痕に接吻を落とす。
貴方「ちょっと、中也…!?」
普段の何もしない俺が普通だと思っているAは珍しく焦った様な驚いた様な声を上げた。
嗚呼、その声も可愛い。
ついていた痕は彼女が何時も仕事で着ている服ならボタンを一番上まで閉めれば隠れる。
俺のだと主張する所有印をつけてやりたい。
そんな普段なら考えても出来ない事が何故か今なら自然と出来る。
彼女の首筋を痕のある位置から上につぅっと舌先でなぞる。
彼女の普段聞けない甘い声が聞こえる。それに煽られてもっともっとと彼女を欲しがる自分を抑え、見える位置に新しく痕を残してやれば、Aは困った様に視線を泳がせて俺の髪に指を絡めだした。
貴方「何、してんの」
中也「気に入らねェ。知らない男につけられてンのが悪いんだろ」
貴方「……どうせ秘書の子にもするんでしょ。こういうの」
真逆そんな言葉が出てくるとは思わなかった。
ただの反抗心なら可愛いが此れがAの本音なら此奴の目に俺はどう映ってるんだ……。
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紅野(プロフ) - お白湯さん» コメントありがとうございます。やっぱり同じになる人多いですよね。いつも名字つけようか迷ってつけるのですが読む人にとったらどうなんでしょうか……。 (2019年1月13日 22時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
お白湯 - 夢主ちゃんの名字が、私の本名の名字と読み方違うだけでびっくりしました(笑) (2019年1月13日 1時) (レス) id: fa6e0c5cd0 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 聖宮さん» ありがとうございます!頑張って書こうと思います! (2018年10月1日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
聖宮(プロフ) - 寧ろ書いて欲しいです、続編楽しみに待ってます! (2018年10月1日 20時) (レス) id: 956436ae5b (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 月詞さん» ありがとうございます!いつもゆっくり更新ですが頑張りますね! (2018年9月28日 19時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅野 | 作成日時:2018年4月15日 0時