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十言目 ページ13

中也side

ぼーっと閉まったドアを眺め乍ら少しずつ酔いが冷めていくのを実感する。



あの華奢で直ぐに折れてしまいそうな身体を先刻この腕に収めていたのだと思い返すと走馬燈の様に初めて彼女に確りと触れた日を思い出した。

何度も頼まれた挙句、自分の中でも一度だけならと諦めがついて彼女の頼みを飲んだ日の事。

実際あの日までは一人の女を好きになるなんて事有り得ないと思っていた。太宰までいかずとも俺も女で遊び歩いていた頃があった訳だし。
でも、あの日のAの目線や声、吐く息や身体の線を真剣に相手にすると突然体内の血液に電気を流し込まれた様な変な感覚に襲われた。


別に彼奴自体はそんなにタイプじゃない。
顔は可愛いという言葉がぴったりなくらい子供っぽいというか童顔だし、見た目だって最近ではそんな事もないが、昔は色気というものとは程遠い様に感じた。
だというのに一度あの変な感覚に襲われてからAを自分のものにしたくて堪らなくなった。



先刻も普段より少し露出のある服を着て、薄っすらと化粧をした彼奴を見た途端、俺の知らない男の所に行くんだと直ぐにわかった。
それと同時に行かせたくないとも思った。
仕事だと言っていたから我慢したものの、此れが彼奴自身の意志で行くんだとしたら確実に押し倒していただろう。



まぁ嫉妬だ。



Aが抱かれに行く日は決まって嫉妬や独占欲が抑えきれない程に大きくなって、それの行き場もない為イライラする。
今だってそうだ。
そのイライラを酒や煙草や殲滅の任務に向けている自分に更に嫌気が差しながらも他に手段がないのも事実だ。

よく部下に普段は何ともないのにそういう大勢の人を殺す任務になると人が変わった様になると言われる。酷い時には拷問をしてるみたいだとも言われた。確かに何処かの映画の悪役がやりそうな事をしてる自覚くらいある。
でもそうしていないとイライラがストレスに変わる。そのストレスを溜めすぎると今度は微熱が出たり寝れなくなったりする。
悪循環なのはわかってるが、Aの事になると言う事を聞かなくなる身体が一番の原因だ。


また乱雑に安物のワインを飲み込んでいく。味なんて感じない程にAの事を考えているんだと思うと悩み過ぎている事が馬鹿らしくなった。
Aが帰って来るまでに酔ってそのまま寝ればこんなイライラも忘れる事が出来るだろうか。




嗚呼、どうしようもない嫉妬と独占欲にまた狂わされていく。

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設定タグ:文スト , 中原中也 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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紅野(プロフ) - お白湯さん» コメントありがとうございます。やっぱり同じになる人多いですよね。いつも名字つけようか迷ってつけるのですが読む人にとったらどうなんでしょうか……。 (2019年1月13日 22時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
お白湯 - 夢主ちゃんの名字が、私の本名の名字と読み方違うだけでびっくりしました(笑) (2019年1月13日 1時) (レス) id: fa6e0c5cd0 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 聖宮さん» ありがとうございます!頑張って書こうと思います! (2018年10月1日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
聖宮(プロフ) - 寧ろ書いて欲しいです、続編楽しみに待ってます! (2018年10月1日 20時) (レス) id: 956436ae5b (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 月詞さん» ありがとうございます!いつもゆっくり更新ですが頑張りますね! (2018年9月28日 19時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2018年4月15日 0時

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