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二十四言目 ページ27

もう異能を使っても寝言しか聞こえない時間。
一度は寝たものの変に気を張ってしまって目が冴えた。
というのも何時も彼が寝ているベッドに寝ていて、しかも至近距離に彼がいる。
言ってしまえば匂いも彼のものだし、数センチ手を伸ばせば大好きな人に触れる事ができる。
好きなのは私だけ。彼はきっと瑞希さんの方が好き。
死にたい。彼に愛されないのなら。

暫く彼を見つめ本当に寝ているのを確認する。
ゆっくりと彼の唇に接吻を落としてベッドから出る。
静かに部屋の扉を閉めると誰に言うでもなくごめんなさい、と口から零れ落ちた。
サンダルを引っ掛けて家を出る。

無意識に足は進む。頭の中は中也の事でいっぱいになっていて泣きそうだ。
歩き出して数分、ついたのは昔よく来た穏やかな川だった。
サンダルを揃えて脱ぎ、浅い所に足首まで入る。
冷たい……。

「夜の入水というのも悪くないねぇ」

振り向けば太宰が偽善の笑顔を貼り付けて立っていた。

貴方「何でいるの」

太宰「その言葉、そのまま返すよ」

太宰にはわかってた。
私が今日、この時間にここに来る事が。

貴方「……きっと中也は私の事なんて見てないから」

太宰「それは本当?」

貴方「だって、中也は私なんかより絶対瑞希さんの方が好き。綺麗で、大人っぽくて、細くて、スタイルが良くて、余計な事しなくて、行動が早くて、自分のすべき事をやれる。そんな人に敵うわけないでしょ」

自然と落ちていく涙をそのままにして更に深い方へと足を進めた。

太宰「止めないよ。それは私の役目じゃない」

貴方「引き止めてなんて言ってない」

太宰「一人で死ぬのかい?」

振り返ることなく深い方へ更に進む。
穏やかだから流される事は無い。けれど、深さはある。

貴方「一人じゃないよ。向こうで先生が待ってるから。全然怖くないんだ」

太宰「じゃあ、何故泣いてるの?」

貴方「中也に愛されない事が辛いから。でももうそんな事も思わなくなるんだ。このまま誰にも邪魔されなければ」

太宰は静かにそう、とだけ言った。
もう胸まで水に浸かっている。冷たいけど、怖くない。だって少し苦しいのを我慢すれば先生がいる。やっと先生に会える。



先生は捨て子だった私を本当の子の様に育ててくれた唯一の家族だった人。
私の目の前で私を守ってとある組織に殺された人。
私の異能が悪かった。
こんなものがなければ先生はまだ生きていた。
会いたい。
唯一の家族。唯一の私を愛してくれた人。


今行くね、先生。

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設定タグ:文スト , 中原中也 , 紅野   
作品ジャンル:恋愛
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紅野(プロフ) - お白湯さん» コメントありがとうございます。やっぱり同じになる人多いですよね。いつも名字つけようか迷ってつけるのですが読む人にとったらどうなんでしょうか……。 (2019年1月13日 22時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
お白湯 - 夢主ちゃんの名字が、私の本名の名字と読み方違うだけでびっくりしました(笑) (2019年1月13日 1時) (レス) id: fa6e0c5cd0 (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 聖宮さん» ありがとうございます!頑張って書こうと思います! (2018年10月1日 23時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)
聖宮(プロフ) - 寧ろ書いて欲しいです、続編楽しみに待ってます! (2018年10月1日 20時) (レス) id: 956436ae5b (このIDを非表示/違反報告)
紅野(プロフ) - 月詞さん» ありがとうございます!いつもゆっくり更新ですが頑張りますね! (2018年9月28日 19時) (レス) id: b65496d137 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅野 | 作成日時:2018年4月15日 0時

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