第四十六話 ページ2
寝不足のまま鏡に向かう。
目が腫れていて醜い。目蓋の辺りが熱を持っている感じ。
昨日のことが、いい意味でも、悪い意味でも夢のようで。全部夢だったらよかったのにと目を伏せる。
置かれた矢、隠れた顔、青い炎に翔ぶ烏。
『でも…先輩僕のこと嫌いじゃなかったのかな』
冷たいタオルと温かいお湯を交互に目蓋にあてがう。こうすると少しでも腫れが引くのだ。引かない分は、まぁ伊達眼鏡で隠れるだろう。
スマホから軽快なアラームが鳴った。もう朝食の時間か。
いつもの副寮長のお迎えは来なかった。
きっともう、二度と来ない。
気まずいよりもっと、すれ違うよりずっと、お互いの心が遠くへ離れてしまった。空気が破裂して、あとは静かに離れていく。
土砂降りに降られているような感覚。悲しくも寂しくもない。ただ寒い。
ルーク先輩にしてもらった髪型をそのまま真似て、部屋を出た。
一人の朝は寂しかった。
それ以上でもそれ以下でもない。
凍えてしまう。
──────────
膨大な数の本の壁に囲まれる図書室にも、静かにマジフト大会が迫っていた。
昼休み。ひたすら救護班の資料に目を通すも、身が入らない。ぼーっとして目が霞む。
きっと書いてあることは去年と変わらないのだろうけど。
だるいな。
入部届は朝一で出したし、受理されるだろう。それなら部室で時間を潰していてもきっとバレない。
鍵は魔法で開ければいい。
『そのためにも勉強しなきゃなぁ…』
「そろそろテストですからね。」
『…対策ノートだ』
「えぇ。今のうちに最終確認を。」
アズールは、なんでもできる。
仲間だと思っていたのも束の間、運動以外は完璧で僕とは比べ物にならない。
「あなたもします？」
『勉強？』
「契約を」
『あぁ…もうこれ以上は』
アズールの商売は去年見た。自分の学力を高く見ていたあの頃の僕には感謝している。地獄絵図だった。あの一部にならなくて良かったと心から思っている。
『狡いよね』
「何がです？慈悲の精神でやっていることですよ。心外ですね。」
そう答えながらも手は動いている。念入りなチェック。努力ができるタイプなんだと羨ましく思った。
『僕も頑張らないとな…』
もう、誰も助けてくれないから。
甘やかしてなんてもらえないから。
『勉強…教えてね。』
「対価は？」
『…やっぱいいや。僕は黙って補習を受けるよ。』
試しにマジカルペンを軽く振る。直後に大量の本に降られて、昼休みが潰れた。
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りーふ(プロフ) - 本っっ当に素敵なお話で大好きです！文章が繊細で綺麗で、だけど重みがあって、、読んでいて不思議な感覚でとても引き込まれました。主人公君の感情の描写も複雑に書かれていて、とても素敵でした。完結おめでとうございます。素晴らしい作品をありがとうございました。 (7月2日 9時) (
レス) @page20 id: f6a41edea5 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - 凄く面白かったです！つられて涙が出そうになるシーンもあり感情移入してしまいました。今後も楽しみにしています。 (2021年9月29日 11時) (レス) @page16 id: 45e8a4f7b3 (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - 文章のお色気がすごい伝わって来ました。夢主とヴィル、ユウの関係性が好みでした。イデアとも。 (2021年7月30日 16時) (レス) id: 88ef9ef77c (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 見ていて引き込まれる文章だと思いながら読んでました。とてもこの作品が好きです。 (2021年7月17日 21時) (レス) id: 137cf07f9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ラウカ | 作成日時：2021年5月20日 1時
