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Said プロイセン
俺が東だった頃。彼女には何回か会っていた。軍事基地で、そこの化身らしく軍服を最後まで脱ごうとしなかった、と聞いている。それを疑わないくらい彼女は軍事基地という自身のあり方に沿った生き方をしていた。
ソ連がロシアだけでひとりぼっちだった時も彼女は側にいた。彼女はロシアの一部で、彼女を含めてのロシアなのだから当たり前といえばそうなのだけれど。
ソ連の崩壊であの男、つまり人の名で言うのならばイヴァンが消滅するかもしれない、それが近いと思うくらいに体調は良くない、でもアメリカには会わなきゃ。そんな時の代役としてきたのが彼女だった。軍人の誇りである軍服しか意地でも着なかったのにそれを惜しげもなく脱ぎ捨てて。
そして挑んだ会談ではロシアのように笑顔を、裏の読めない表面的な笑顔を浮かべたまま、行った。
怖えやつ。そうスペインが形容したのはあながち間違っていない。
そんな彼女は現代で多少は性格が丸くなったものの基本的には裏の読めない不気味なやつだった。でも時折見せる芯からの笑顔は可愛らしくて、そこに惚れるやつは多かったんじゃないかと思う。ラトビアを筆頭にバルト三国、ロシアにポーランドも。そしてもれることなく俺も。
鈍くない彼女はそれに気づいていながらかわしてきた。ただ、ラトビアにはちょっとした特別な気持ちがあるようだけど。
記憶を失っているんだろう、こいつは。屈託なく笑う彼女をかわいいと思うのは惚れた弱み。
これを機に奪ったってそれは俺の特権だろう?
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作者名:何處 | 作成日時:2016年6月26日 21時