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件の天使くんであっているらしく、彼はごめんなさいと言った後、どうかしましたか?と聞いてくれた。でも私はそれに答えられない。
声だけでわかる。
私とこの彼は恋人だ。
愛しいのだ。全てが。彼の声はもちろん、息遣いも、全部が全部。
『あの、どうかしましたか?』
再度の問いかけに私はゆっくり言葉を選んで伝えた。漏らすことのないように。
「私、「窓口」は今現在大きな鏡の前にいます。迎えに来てください」
場所情報は大丈夫だろう(か)。自分が誰か、何をしてほしいか。うん、全部伝えた。
『あ、そこの近くに多分プロ』
「ごめん、いうことを一つ忘れていた。
私には一切の記憶がない。記憶喪失だと思われるし、せっかくだから個人名は出さないでほしい」
ないんですか!という悲鳴に似た声が帰ってきた。
ないんだな、これがまた。
「各国の言葉はわかるらしいが個人的なことはわからない」
『自分がどういった存在であるかも?』
「え、人間じゃないのか?」
向こうから大きなため息が聞こえてきた。そういうことではない、ということだろうか。
「君のこいびと」
『は!?』
違うのだろうか。しかし声には嬉しさが滲んでいたのは良くわかる。
『とにかく、そのあたりにあなたの知人がいますから回収してもらってください!さよなら!』
叩きつけるように切られた電話は虚しく電話口からツー、ツーという音が聞こえてきた。
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作者名:何處 | 作成日時:2016年6月26日 21時