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「つ、遂に……」
震える手で、筆先をインクで浸す。
ページの締めにエンドの文字を綴り、僕は万年筆を机に置いた。
「完成したぞーっ!!!」
あれから数日。
エンディングが浮かばないままの台本を、僕は漸く完成させることができたのだ。
誤字脱字が無いことを確認後、机に散らばった紙をまとめて冊子にする。
まだタイプライターで打ち込む作業をしていないけれど、今日はひとまずここまでにしよう。
「……ルカくんのおかげだな」
彼の優しい笑みを思い浮かべ、僕は台本を抱き締める。
「……って、何だこのポーズ。僕は恋する乙女か」
親友として惚れてはいるけれどね!
「……ねむ」
ふわりと欠伸が出る。
…時計を見ると、深夜の二時を指していた。
この夜を越えたら二徹だ。
眠気を通り越して謎のランナーズハイに突入していたが、気がつけば僕はベッドに吸い寄せられていた。
「ああ最高だ──こんなにも素晴らしい脚本が出来上がるなんて!
これは間違いなく…傑作になる!」
睡魔がゆっくりと深層世界にいざなう。
海底に沈むように、僕は意識を落とした。
*
僕にしか作れない物語を。
僕だけの表現を。
君と僕の世界を、地獄の狭間の優しい
観せるんだ。
作りたい。創りたい。造りたい。
ああ……もし この願いが叶うのならば。
やり直したい。
許されるのならば、もう一度。
チャンスがほしい。
大切な人を悲しませるのは、もう嫌なんだ。
──用心せよ。
彼の声が聞こえた。
──気を付けろ、巨大な蛇が戸口に構えている。
ニュンペーは食われるぞ。
用心せよ。用心せよ。用心せよ。
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作者名:大二重 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/meernosedona/
作成日時:2021年3月21日 18時