【ヒプノシスマイク】おい、こいつどうにかしろpart6

番外編 CROSS AND MUDDY4 ページ29

組長の命令通り、俺の部下は切腹したとの報告を受けた


もちろん、俺は組長に何も言うことができない


本人のいる前で悲しそうな表情だとか、苦しんでる表情なんてしたらきっと良い気はしないだろう


俺は何も無かったかのように組長に接した




あの日から1週間後


俺はまた組長に呼び出しを食らった


また面倒なことに巻き込まれなきゃいいけどな……


少し憂鬱な気分になりながら俺は組長の部屋に入った




｢今度はなんの仕事だ？｣

｢…………｣

｢……組長？｣




何も言わないで座っている組長に違和感を感じる


そして、組長は視線を変えないまま口を開いた




｢俺の部屋で楽しかったか？｣

｢……は？｣

｢俺が会議中、楽しかったか？って聞いてるんだ｣




心の奥底が冷えていくのがわかる


なぜ知っているのか


どこまで知っているのか


聞きたいことはいっぱいあるのに言葉にできない


俺もあの男のように殺されるのだろうか


そんなことを思っていたが、予想外の答えが返ってきた





｢まあ、水に流してやるよ｣

｢……え？｣

｢そのためにあの部下が死んだんだからな｣

｢……おい、どういうことだよ｣





嫌な予感がした


さっき以上に心の奥底が冷えていく


なんとなく言ってる意味がわかってしまったからか


自分から聞いたのにも関わらず、聞きたくないとすら思えた





｢だからお前の部下が身代わりになったんだよ
本当はお前の役をあいつが代わりにやるって名乗り出たんだ｣

｢なっ……！？｣





思った通りの話で俺はどうにも出来ない気持ちになった


どこか違うと信じたかったのに本当になってしまった




｢藤原｣

｢…………｣

｢お前は俺の側近になれ
俺を見る度に自分が部下を殺したことを思い出せ
人の女を奪おうとした罪を思い出せ
そして……｣



『苦しめよ、藤原』



そう俺の胸ぐらを掴んで言った


俺は言われた通り、組長の側近となり、傍に居続けた


そして、逮捕された今


縛られるものはなくなった


俺を苦しめるものも消えた





｢藤原さん｣





そう呼ぶ声は、かつて聞きなれた俺の愛した女の声だった




｢やっと、やっと会えた｣




涙を流しながら笑う彼女は、前とは違って嬉しそうに見えた


俺に抱きつく彼女を支え、片手で頭を撫でた




｢……待たせて悪かった｣




彼女の流す涙は俺のシャツへと染み込んでいく


そして、そのシミはいつしか俺の涙も含まれていた

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