【ヒプノシスマイク】おい、こいつどうにかしろpart6

番外編 CROSS AND MUDDY1 ページ26

大事な人を二度失った


1人は俺を庇って死んだ


もう1人は俺の元を離れて他の男の元へいった




この世界に入ってもうじき10年


血に、悪に染まりに染まっていく


自らの手は自分が思っている以上に汚く、醜いことに気づくまでに時間がかかりすぎた





｢藤原さん！
今日こそ行きましょうよ！
本当いい女なんです！｣

｢俺はいいって言ってんだろ｣

｢あ、さては藤原さん
好きな女いるんですね！？｣

｢あー、うっせぇうっせぇ
お前はそこらへんの女にナンパでもしてこい｣




後ろで何か言ってる部下を放って俺は事務所へと戻った


そして見慣れた後ろ姿が目に入る




｢また来てたのか、嬢ちゃん｣




そう言うと嬢ちゃん……花巻佳奈は振り向いた


組長の女……だと思われる彼女はよく事務所に姿を見せた


こんな男苦しいとこ、尚且つ治安の悪い所によく来るもんだと思うことは多々ある


それも組長の命令なんだろう


何度か怯え、困惑している姿を目にしたことがあった


その度に声をかけていた覚えがある


彼女は一般人


こんなところにわざわざ苦しみに来る必要なんてない


組長のために流している涙はひどく綺麗に見えた


でもそれ以上に彼女の見せる笑顔にひどく惚れ込んでしまっていた事実は自分の中に隠していた


他のやつの女……ましてや組長の女


ほかの男ならまだしも組長の女を横取りするだなんてできるわけもなかった


この気持ちは早々に消し、切り替える必要があった


だが、その気持ちを止めるかのように彼女の言葉は言ったのだ



『もう耐えられない
私、藤原さんと一緒にいたい』と



神は俺に諦めることさえ許してくれなかったらしい


それが今まで自らの手を汚してきたことへの代償にすら思えた

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