第53話 ページ6
降谷side
羔野と初めて喋った時は事情が事情なだけに
警戒心が剥き出しだった
だがしかし、今ではとある仲間4人と共に月一で酒を酌み交わす仲であるのだ
互いに遠慮なんて壁はないし
最近では誰の家でも
勝手知ったるという風に振る舞うようになった
まあ、そんな付き合いが長く続く中で気付いたのだが
羔野は、超がつくほどの鈍感であるようだ
他人の事に関しては誰よりも早く気が回せるが
自分に向けられた好意となると
急にポンコツと化してしまう
多分今だって
ポアロに客が増え始めた要因が自分にあるだなんて事
1ミリも思っていないのだろう
よく“零さんは凄いですね”なんて言ってくることがあるが
それは特大ブーメランであるのだと早く理解して欲しい
彼自身の自己評価が低いのは確かだろうが
あんなハイスペックで生きてきて
一体何処で自己評価を落として来たのだろうか
それは俺の中でもTOP3に入るレベルの謎である
まあ、そんな謙虚な態度や完璧な性質故に
周りからは“羔野＝保護者”だと思われる事が多い様だが
実を言うと、俺たちにとっては真逆なのだ
恐らく、例の4人に聞いても
満場一致で同じ答えが出るだろう
羔野は弟だ、と
少し気を緩めた時＿＿
＿＿つまり俺たちと一緒にいる時、羔野は弟になるのだ
別に、表立って甘えてきたりする訳ではないし
大幅にキャラが変わる訳でもない
ただ少し、危なっかしいなと思わされるような
俺達が守らなければいけないと思うような弟っぽさなのである
あ、ほら
今だって
「……、」
注意して見ていないとわからないが
カフェラテを口に含んだ時、少しだけ眉が歪んだ
人前だから大分表情を抑えているようだが
俺たちの前では、それがより顕著に現れるのである
(ほぉー、まだ羔野には苦かったのか……
……よし、次はもうちょっと甘く作ろう)
降谷は自分たちの弟分をひそかに甘やかしながら
今日も潜入捜査を頑張っている
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作者名：＿名前を変える必要がある | 作成日時：2019年7月19日 14時
