成長 ページ23
.
「たいが，おたんじょうびなの！」
12月。
待ち合わせ場所でおれを見つけるなり，大我くんがニコニコと「3さいだよ！」と飛び跳ねる。
「え，そうなの！？おめでとう！」
出会った頃よりも少し背が伸び，おしゃべりが上手になった大我くん。
先週，“じぇしーって言えるようになったよ” と高地から動画付きのLINEをもらった時はすっげー嬉しくて。もちろん動画は保存してある。
そんなことはつゆ知らず，何のプレゼントも用意していない。
「じゃあ，お誕生日プレゼント買いに行こっか」
申し訳ないからいらないよ，とか言ってる高地は無視して，ショッピングモールのおもちゃ売り場へとやって来た。
男の子が好きそうな戦隊ヒーローの変身ベルトや光る剣，プラレールなどに一旦は興味を示すが，“かっこいいね”と棚に戻しているから，欲しいわけではないようだ。
そんな大我くんの足がピタッと止まったのは，
「これ乗りたいの？」
「のりたい」
自転車。
とは言っても，その自転車は小学生用で大我くんの背丈くらいある。
「大我には，まだ大きくて乗れないよ」
「のれるもん！」
高地が大我くんを抱き上げて，サドルに乗せてみる。「ほら，足がつかないでしょ」と言うと，大我くんは一気に，ムーッと不機嫌な顔に。
どうしようかと困っていると
「同じデザインで小さいサイズもありますよ」
店員さんからの，神の一声。
早速持ってきてもらうと，まさに大我くんにピッタリのサイズ感。一番小さい12インチ。
「うわあ！これほしい！」
キラキラした目で自転車を見つめる大我くん。
こんな高いの買ってもらうわけには…，と渋る高地は再びシカト。
店員さんに勧められるがまま，ヘルメットや膝当て，肘当てセットも合わせてお会計。
大きな公園で，早速完全防備した大我くんが自転車に跨がる。
補助輪が付いているとは言え，三輪車に比べれば不安定で。初めての感覚にヨロヨロとしている。
大丈夫，上手だよ！と声をかけながら，動画を撮っている高地。
30mくらいの距離を5分かけて高地のもとにたどり着いた大我くんが「じてんしゃのれた！」と笑顔を向ける。
「すごいね大我〜，かっこいい！」
高地もまた，嬉しそうに大我くんの頭をガシャガシャと撫でる。
そんな親子の笑顔が，おれにはキラキラと眩しかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 832人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
MOMO(プロフ) - ぴさん» 温かいお言葉ありがとうございます！今後も更新遅いかもしれませんが、楽しみにしていてください！ (2021年1月24日 21時) (
レス) id: 4320b1fb5c (このIDを非表示/違反報告)
MOMO(プロフ) - かえるさん» 更新大変遅くなってすみません！読んでいただきありがとうございます！丁寧に2人や家族の姿を書いていけるよう頑張ります (2021年1月24日 21時) (レス) id: 4320b1fb5c (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - MOMO様、はじめまして。とても素敵なお話で心がぽかぽかと暖かくなります。とても大好きな作品です！更新楽しみにしています！ (2021年1月22日 2時) (レス) id: 2638b3f7ce (このIDを非表示/違反報告)
かえる(プロフ) - MOMO様、大好きな設定です。更新を楽しみにしています。友人から恋人、家族になる二人と周囲の心情が描かれるのが楽しみです! (2020年10月3日 4時) (レス) id: 16b705ad97 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：MOMO | 作成日時：2018年4月3日 2時
