37.なにかきっかけが ページ38
.
「…あの、セフンさん」
「オッパね」
「…セフニオッパ。なんで、私のあんな陳腐なアイデアを採用したんですか？」
「ん、陳腐なアイデア？」
「お洒落したら自信出るんじゃないかっていう、誰でも思いつきそうなアイデアですよ」
「あぁ、それね」
ベンチに座って、通り過ぎていく人たちを眺めながら、ふと聞いてみた。
「確かに、本人もわかってたかもしれない。でも、俺たちの元を訪れたってことは、自分を変えるためのきっかけが欲しかったってことだと思う。踏み出すのって、勇気がいるからね。俺たちはそのきっかけを作ってあげたってだけだよ」
「きっかけ…」
「ま、久しぶりに出かけたかったし！それもあるけどねー」
うーん、と伸びをするセフンさん。
きっかけ、か…。
何かきっかけがあれば、私とセフンさんの関係も…なんて。
「ん、そろそろ30分経つね。待ち合わせの場所に行こっか」
セフンさんはスッと立ち上がった。
「…そうですね」
私がゆらりと立ち上がると、セフンさんは私の手を握る。
…この手は、どういう意味なんだろう。
私がはぐれるのを防ぐため？
…なにそれ、やっぱ子どもじゃん。
「Aちゃん？」
「え？あ…い、行きましょう」
私は手から目を逸らし、歩き出した。
「んー、まだ来てないみたいだね。俺、ちょっとトイレ行ってくる。ちゃんとここに居るんだよ！知らない人に話しかけられても無視すること！分かったね！！」
「は、はい…」
清々しいほどの子ども扱いに、今更、子ども扱いするな！！と言えるはずもなく。
セフンさんはスタスタとお手洗いに行ってしまった。
…もはや傷つかないんだよな、そこまでされると。
なんて思っていると。
「あの…」
男の人の声が、頭の上から降りかかってくる。
…あ、知らない人だ。セフンさんに言われた通り無視無視…
と、一瞬思ったけど。
「…え、まさか、ジョンインさん！？」
「は、はい…そんな、変わりましたかね、僕…」
えへへ、と少し照れたように笑うジョンインさんは。
さっき買った服を完璧なスタイルで着こなし、髪もさっぱりして1000円カットだから無造作だけどそれがオシャレに感じるほどで、地味だと思っていた縁のあるメガネはファッションの一部として消化され、セクシーな目元や口元が魅力的な男性になっていた…。
お、恐るべしポテンシャル…。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 169人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LUKE | 作成日時：2020年10月6日 22時
