◇ ページ49
「だいちゃんはモテないでしょ」
「山田が知らないだけ」
「そうなの?」
「山田ほどじゃねえけど、週一くらいのペースで他校の女子にコクられたりしてるから」
全部断ってるけどさ。
片想いを続けるのも辛くなってきたら、違う道へ行くのもありなのかな。
さっき山田が言ったように、付き合ってみたら好きになれるかもしれないし。
「…」
「やまだ?」
隣の足音が消えて立ち止まって振り返ると山田と目が合った。
「知らなかった。知らないこと、まだ沢山あるのかな」
「え?」
それまで纏っていた妖しげな雰囲気が一変して、昔の、よく知る幼馴染みの切なげな顔がある。
「急にどうした?」
「誰にも取られたくないんだよ」
距離を詰めた俺に、あの見ないようにしていた上目遣いで、制服の袖をきゅっと握る。
大好きな玩具を取られないようにするみたいに。
「やまだ…」
「…なーんてね。」
にっこり笑って、いつもの表情を作り俺を置いて先を歩き出す。
「待ってよ」
「んふふっ…早く好きな人と結ばれたいなぁ〜」
追いかけて隣に並ぶ。
ここが今は俺の居場所。
誰にもとられたくない特等席。
「誰?」
「誰でしょう?」
嘘と冗談と真実。
うまく交ざりあってどれがどうだか判別不可能。
「だいちゃんは騙されやすいタイプだろうから、告白されても断ってね」
「なんだよそれ。山田に決められたくねえし」
本当に心配からなのか、その言葉に裏があると勝手に解釈してもいいのか。
「…いいじゃん。幼馴染みなんだから」
「そっか。幼馴染みだもんな」
「うん。とっくにだいちゃんの隣は埋まってるの」
期待させるような台詞。
直してほしい悪いところ。
だから勘違いされるんだよ。
「俺が好きな人と結ばれるまでは、この席にいるから」
山田は本当に、ズルい…
__________________fin.
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