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そのせいか山田は布団の中へ逃げる。

「俺でごめん」
「……」
「裕翔に連絡してみるな」

落ち込んでる場合じゃないんだ。
弱っているときは普段頑張っている分、うんと甘えさせてやりたいんだ。
そしてその役目は、俺じゃないことを知っている。

「…なんで、ゆうと…」
「だってお前、裕翔のことが好きなんだろ?」
「……ぇ…?」
「今まで俺に付き合ってくれてありがとう。もう、やめような。」
「ま…まってよ…、変なこと言うな…俺はっ」

誤魔化さなくていい。
分かってる。
言いかけた言葉も、もう我慢するなよ。
それでもまだ言えないなら…俺から言うよ。

「…ちがう、から…」
「俺と目が合っても山田はすぐに目を逸らして裕翔のこと見てただろ?
完璧な失恋だった。勝ち目はなかった。
そんなときお前が……」

甘えから始まった弱い心への言い訳。
結局後戻りはできなくて、後悔したって手離せなかった。

「どんな形でも山田と繋がれるならいいかなって思っちゃったんだ。
裕翔と上手くいったらこの関係は無かったことにして祝福しようって決めてた。
でも、出来そうになくなっていくんだ。」
「だから…俺は…裕翔のことが好きなんじゃないっ…!」

ここまで来ても否定する……その目は本気。
裕翔を見つめるあの目はなんだった?
不安と愛が交ざるような儚い横顔を、気付かれないように見ていた俺。
あれが勘違いだったなんて、そんなこと…

「じゃあなんで…誰とも付き合わないんだよ」
「んなの…っ……ケホッケホッ」
「っ、わりぃ、体調悪いのに喋らせて……
お粥作ったから後で食えたら食って…」

何をやっているんだろう。
カッコ悪い姿しか見せていない。
振り向いてくれる要素なんか無かったよな。

俺がさっさと諦めれば、それで終わってたんだ。
ここへ二度と来てはいけない。
少なくともこの気持ちとお別れができるまでは。

これで最後。
満足な看病も出来ずに帰る俺を嫌ってくれ…。

「…逃げんなよ…言えよ、お前はなんで新しい恋人作らねえんだよ」
「……」
「俺はずっと、大ちゃんが俺の体に溺れればいいって思ってた。
それが、答えだよ。」

俺の答えは簡単だよ。
お前以上に好きになり愛せる人がいない。

山田の答えは、いつも俺が組み敷かれて啼く山田を見下ろしながら願っていたこと。

でもそれは俺らの関係じゃ意味のないこと。
口に出すなんてあり得ないこと。
なあ、山田も俺のこと、好きでいてくれたのか?

◇→←◇



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作者名:有岡夢莉 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2018年3月4日 16時

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