◇ ページ42
改めてみる現実。
あの日、ちゃんと断って、告白しておけばよかった。
今更言えない。
最後までしっかり騙すんだ。
頬から流れるようにおでこに手を置いて冷静を保てるように髪を撫でる。
「…気付いてないの?山田、熱があるよ。寝てな。」
ボロを出さないように大人を装って馬鹿らしい。
俺は倒れている山田を見つけられて良かったけど、
山田にとっては外れだったんだ。
「…ゃだ……気にしなくていい…やろうよ…」
「やまだ…」
「…してよ、そのための、おれでしょ…?」
泣き出してしまった山田。
自分の分身として抱き締めている気になったパーカーに染みが出来た。
「…駄目。俺だって鬼じゃないんだから。」
涙を拭ってやるのは俺の役目じゃないけど、
放っておけるわけねえじゃん。
頼むから止まってくれよ。
……耐えられなくなるじゃん、、、
「もっと辛くなっちゃうから泣くなよ…」
「…っ…いらないの…?…もぅ、…用無し…?
他の誰かにするなら、俺にしてよ…ぜんぜん、だいじょうぶ、だから…」
馬鹿なこと言うな……それはどっちだよ。
俺が山田のすべてを受け止めたかったよ。
他の誰にも渡したくねぇんだよ。
全然、大丈夫じゃねぇんだよ……
そんな風に懇願しないでくれ……
「ごめん……もう無理だ。」
白旗をあげるしかなかった。
すると、喉が貼り付いたような変な音がして、山田を見ると明らかにおかしい。
「…ひっ、…ゃ、…やだっ……」
「やまだ……?」
「…ゃだ…やだっ…ひぅっ…」
異常を来した体が悲鳴をあげて過呼吸を起こした。
「落ち着け山田!ゆっくり、ゆっくり深呼吸して?」
「っ…ひゃぅっ……だ、…ぃや…」
俺の声は届かないのか嫌だ嫌だを繰り返している。
今山田を助けられるのは俺しかいないんだ焦るな…!
取り合えず体制を変えよう。
横向きにして声を掛けながら背中を擦った。
「大丈夫…ゆっくり…ゆっくり…っ…」
俺がしてやれるのはそれだけのこと。
山田が辛そうな姿をみたくないのに、その姿を作り出した要因に自分もいる。
情けなくて悔しい思いで声を掛け続けた。
次第に呼吸が安定してきても心配で心配で
側を離れることはできない。
「…ありがと…」
「……」
「…もう帰っていいよ……やっぱり今日は、相手できそうにないや……」
「まだ、ここにいさせてくれ」
「……」
そういった類いの言葉は使ってはいけないと勝手に自制していたけど、コントロールが利かなかった。
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