◇ ページ39
駅の改札の前。
手の中のスマホを覗く伏し目の長身は一枚の絵画みたいだ。
人一人が入るスペースが隣にあって、裕翔ならいつでも埋められたはずなのに空けられていたのは俺のため。
「…待っててくれたんだ…」
「、おかえり」
「…連れてきてくれてありがとう」
帰ろう。
動く様子がなく壁に体重を預けている裕翔の腕をとって改札へ向かう。
けど、
俺が握ったはずの腕は逆に握られ振り向けないまま動けなくなった。
「ヤマ…素直になってよ。
俺はヤマが笑っていてくれるだけで幸せなんだ。」
「なに、言ってんの…
…ゆうとにちゃんと返事しようと思ってたのに……」
「俺のは最後の悪あがきだよ。
3年経ってもヤマの中には大ちゃんがいて、
俺なんてたったの一日居座ろうとしただけ。」
「ゆうとのばかっ、
優しすぎると損するんだよ…」
「ふふっ。笑
それでもいいと思えるヤマに出会えて損はないよ」
だから、そういうところだってば……
何で俺は裕翔を好きにならなかったんだろう。
こんなに思ってくれる人、他にいないのに。
「ごめんなさい…俺、ゆうととは付き合えない。」
「わかった。でも、最後に__」
「っ、……」
引っ張られて気付けば裕翔に抱き締められていて、背中に回る腕が少し強くて痛いくらい。
トクン、トクン…鼓動の音が早くなっていく。
「…ゆ、と…」
「……ほら、行きな……」
ほどかれてくるりと体を反転させられ
背中を両手で優しく押された。
顔をあげたところにいたのは、
息を切らした大ちゃんだった。
「……」
「はあっはあっ…
…俺、自分の力で自立できたら山田を迎えに行こうと思ってた。
けど、お前に会ったら駄目だ…
もう離れたくないっ!」
一人でどんどん先へ進んでいってしまう。
追い付けなくて隣を歩くことは無理なんだって諦めた。
無理に大人になろうとしなくていいから。
これからは歩幅を合わせてくれますか?
______________fin.
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当然失礼します。作者です。
次に乗せるお話なのですが、Twitterの方で書いていた【my answer…?】【your answer】の視点を変えたバージョン?です。
そちらを知らない方は少し分かりづらいかもしれません。
なので、意味不明だな、と思ったらスルーしてください!笑
Twitterの方が気になるというお方がいらっしゃれば→@hsj_yuriri までお越しいただければ(・・;)(ピンク多目ですが…)
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