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◇ ページ36
「……カフェ？」
木目の看板に刻まれた店名は“マーガレット”
外観はシンプルなのにお洒落で俺好み。
「あ、ゆうと、まだcloseだって」
「そうだね、」
時間まで確認していなかったのかな？
裕翔にしては珍しいと思いつつ、これからどうしようか考えていると隣にいた裕翔が歩き出して猫の尻尾のようなドアノブに手をかけそれを引いた。
「ちょっと、ダメだよ…！」
焦る俺とは対照的に落ち着いて笑っている。
すぐにドアの向こうから
“おっ、裕翔！来てくれたんだ”
って、
フレンドリーで底抜けに明るい声が聞こえた。
「今日からでしょ？
一番のお客さんになろうと思ってさ」
「そりゃ有り難い！
まだ開店前だけど裕翔が一番だよ！」
「あー、ごめん。
俺は一番目のお客さんじゃないんだ。」
一枚の壁の向こうで繰り広げられる会話に、
そうだ、そうなんだ。
って鼓動がバクバク煩くなる。
顔を俺の方へ戻した裕翔はその場から動けないで固まっているのを気にせずに“ほら、こっちだよ”って呼ぶ。
「誰か来てんの？
俺、裕翔にしか開店日言ってないけど」
あぁ、俺はやっぱり忘れられてんだ。
それなら俺はいない方がいいんじゃないの？
心情はそのまま表情に投影していたんだろう。
困った顔の裕翔が一度ドアを閉め俺を迎えに来て“大丈夫”と頭を撫でた。
「ねぇ、どうして……」
「言ったでしょ？
ヤマの気持ちをちゃんと聞きたいんだよ」
目の前に立つ大きな体の背後でカランッとドアベルが鳴った。
「…やまだ…？」
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