◇ ページ34
＿＿＿あれから3年。
「俺と付き合ってください」
「…ぇ…ゆうと、本気？」
「高校の頃からずっと好きだったんだ。
けど、あの頃のヤマは有岡くんのことしか見てなかったでしょ？」
何だか、久々に聞いた名前。
大きく鳴る胸の音。
もう忘れたんだから、これはきっとただの不整脈。
「俺そんなに大ちゃんのこと見てた？」
「誰が見ても分かるくらいにね」
「でも、……大ちゃんは気付いてくれなかった」
「今でも好き？」
大ちゃんの存在を忘れることなんて出来ない。
でも、
「好きとかそう言うんじゃないよ。
ただの幼馴染みだったよ、ずっと。」
嘘をつくくらい、いいよね。
一度抱いた感情に蓋をして、二度と開かないんだから。
「ゆうと、俺でいいの？」
「ヤマがいいんだ」
今はまだ裕翔の気持ちに応えられそうにないけど、付き合っていけばそのうち。
……自分勝手だな、俺って。
俺を見下ろす裕翔と目を合わせようと上を向いたら
あの日にも我慢していたものがポロッと零れ落ちた。
「そんな辛そうな顔、見てられないよ」
「…っ、…これは、ちがくて…っ…」
「いいんだよ、本当のこと言って。
その涙は誰に流してる？」
自分でも分からないんだよ。
大ちゃん、俺はどうしたらいい？
それからは何の返答もできなくなった。
裕翔は困っただろうけど何も言わずに背中を擦って家まで送ってくれた。
女々しくて情けなくて、叶う筈もない夢をまだ追っている自分に気付いて。
“皆との思い出”だからと言い訳付きで飾った卒業式の集合写真に、一人暮らしを始めたアパートにまでアイツのあとを残しているんだって。
「こんなのっ……！、」
勢いで掴んだけど、捨てられるわけもなくて。
そのまま床に引き寄せられるように膝から崩れた。
“現実見ろよ？”
残酷な言葉を残した彼は写真の中で強い目をして笑っていた。
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