◇ ページ28
そっと近づけば規則正しい寝息が聞こえた。
「山田……」
帰ってなかったんだ。
自分を襲った男の家で無防備な寝顔を見せていいのかよ。
色んな疑問が浮かぶ。
昨日は何故俺と二人がいいと言ったのか。
何故俺を拒まなかったのか。
自宅に戻らずにここで寝ていることも。
山田の考えていることが分からないよ。
目を覚まさないようにそっと部屋から出た。
今日はソファで寝よう……。
ジューッ
「ん〜〜……」
チンッ
「んー…にゃん、の、おと…?」
慣れない体勢で寝たせいで痛む体を支えながら目を擦って起き上がる。
カチャンッ
「〜〜っ……」
「あ、おはよう。」
「お、はょ……」
「キッチン借りたよ」
「、おぅ……いいけど」
「一緒に食べよ?顔洗ってきな」
狼狽える俺と普通な山田。
立場が逆転しているんじゃないか?
「山田」
「ん?」
「あの夜のことなんだけど、」
「……」
「どんな風に謝っていいか、俺、」
「ご飯中にそんな話やめてよ。俺これから仕事だし。そのあとにしよ?
終わったら、ここに来るから。」
「……うん。」
先に食べ終わった山田はお皿を片付けてあの日と同じ服のまま出ていった。
ただ後ろ姿を見ているだけだった俺に一瞬顔を向けた山田は悲しそうに微笑んで。
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