◇ ページ14
ym.side
大ちゃんのバカ。
……でも、俺はもっとバカ。
学校でサボりたいなんて溢す大ちゃんを少し驚かせて元気付けようとしたのに
渡すはずだった紙袋は絡まれたときにどこかへ落としてしまった。
取りに戻るのも無理だよな。
まだ変な奴がいるかもしれない。
まともに前も向けず歩き続けて、冷静になってきて。
残してきた大ちゃんを思って苦しくなった。
なんだよ……優等生は優等生らしく、って。
俺がそんな良い子じゃねえこと知ってるはずじゃん。
いつもと違う冷たい言い方で、馬鹿にされたみたいで嫌だった。
勉強嫌いの俺がどうして優等生なんて皮を被ったのか、あいつは知る由もないけど……。
「ばーか……」
橋から見下ろす川は水面が照らされてゆらゆら揺れて見えた。
少しぼやけたのは、きっと、さっきの恐怖を思い出したから。
大ちゃんに言われたことに傷ついて悲しんでる訳じゃない。
そんなのカッコ悪すぎる……っ。
「おやおや、可愛い子がこんなところで何してるんだい?」
「っ……、」
突然話しかけられて反射的に振り向くと、優しそうで妖しい笑顔を浮かべたお爺さんが俺を見ていた。
「べ、別に、何も……」
「可哀想に。何か辛いことがあったんだね」
「……」
「話してごらん」
本当なら返事なんかせずさっさと逃げればいいのに、何故かそれが出来なかった。
不思議なくらい心のチェーンが緩んだ。
普段なら絶対に誰にも言わないのに。
「…俺は、ただ、あいつの……。」
あいつの、側にいたかった。
泣いてしまいそうで、口に出すことはできなかった。
すると、黙りこんだ俺の心の声を聞いたように、お爺さんはこう言った。
「そうかい。
ならば、おじさんが力を貸してあげよう。」
「え?」
次の瞬間、お爺さんの目の奥に何かが光って、俺の体から魂が抜かれるようにフワッと浮く感覚。
最後に見えたのは、さっきと同じく優しそうで妖しい笑顔だった。
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