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ym.side
「卒業おめでとう!」
人気者のゆーとくんは沢山の人に囲まれてお祝いの言葉を貰っていた。
まだまだ制服に着られている感満載な僕は、最初から最後までピシッと制服を着こなした大人なゆーとくんに近づけずにいた。
本当は、一番に『おめでとう』と言いたかった。
でも今朝は出る時間が違くて会えず。
学校ではここぞとばかりに話しかけられている。
はぁ…。僕の『おめでとう』は一体何番目になるんだろう……。
「や〜まだ!」
「、伊野尾先輩」
「伊野ちゃんでいいって言ったよね?」
この伊野尾先輩という人はゆーとくんのお友達で僕にも優しくしてくれた。
「ご卒業おめでとうございます」
「全然おめでたくないよ〜!もう学校で山田に会えないじゃん」
「近いですよ」
ちょっと変わり者で息がかかりそうなほど顔を近づけてきて自分から先輩の肩を押さないと離れてくれないのが気になるけど。
「っ」
「そーだ。山田に渡したいものがあるんだよね」
「……渡したいもの?」
「そー。卒業式で貰うアレ」
卒業式で貰う、……て、まさか、卒業証書?
「頂けません!」
「えー?山田にもらってほしいんだよ」
「ダメですよ!ちゃんと自分で保管しないと!」
「……ふふふっ」
「……何笑ってるんですか?」
「男的には貰ってもらった方が格好がつくんだけどな〜」
「そういうものですか?」
初めて聞いた……、
高校生は卒業証書をあげちゃうんだ
「受け取ってくれる?」
伊野尾先輩は満面の笑みで首を傾げた。
でも、せっかくなら……
「僕じゃなくて、好きな人とか大切な人にあげたらいいじゃないですか!」
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