愛の彫刻は消えない【宇髄天元／煉獄杏寿郎】

before or after ページ6

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「おー、いらっしゃい。」


いつものようにパーカーのフードを被った宇髄さんが入口で私を出迎える。
頭の先から爪先まで、私の全身を舐めるように見た宇髄さんが何も言わずに入口の鍵を閉めた時、くじ引きで当たりを引いたような気持ちになった。



「一応聞くけど、希望は？
　デザインとか。入れちゃったら修正効かないから。」

『うーん。
　宇髄さんの好きにしてくれたら、それで良い。』


私の身体は貴方の画布(キャンバス)。
好きに描いて、支配してくれたら、それだけで良い。

そこまでは言えないから、“好きなように”とだけ言った。


「ふーん？
　本当に好きなようにして良いんだ？」

『うん。』

「痛くて泣いちゃうかもよ？
　俺、Aちゃんが悶えてる顔が好きだから。」

『知ってる。
　だから、もっと好きになってもらいたいの。』


普通の男女がする会話ではないけれど、今まで囁き合ったどんな愛の言葉よりもリアルで、生々しかった。


「従順な女の子って良いよな。
　懐柔(かいじゅう)しただけ、可愛くなるから。」

『…宇髄さん。』


ニードルを準備する手を止めて、んー？と振り返った宇髄さんの目をまっすぐ見つめた。


『宇髄さんが、私をとびきり可愛くして。』


面を食らったように少し驚いた表情を見せた彼は、すぐさま唇の端を吊り上げた。
準備していた道具を置いて立ち上がると、後ろから私を抱きしめた。


「本当はさ、素直に脱がせやすい服を着て来たAちゃんに満足して、適当に手の甲あたりに入れてやるつもりだったんだけどなー。悔しいけど、派手に予定変更。」


そう言って宇髄さんは、私のワンピースの背中にあるファスナーに手をかけた。
その瞬間、心臓が跳ね上がって、急にものすごい勢いで動き出す。



「前と後、どっちがいい？」



前回入れた頸のタトゥーに吸いついて、くぐもらせた声が、痺れるように頭の中で響く。



『あ…の……っ』


「なぁ、どっち？」



振り向いたと同時に落とされたキスに、宇髄さんのペースに完全に支配されて、溺れて、これ以上なにも考えることなんて出来ない程、頭の中は彼でいっぱいになった。






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