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「そういえば二日酔い大丈夫なん?」
「先輩といたら治ってきた気がします」
「え何それ褒め言葉?」
「いや……考えることが多すぎて」
「なんやねん」
関西弁が心地いいのかもしれない。地元を思い出せるから。
先輩と2人で過ごした立命館宇治時代の思い出が
ふわっふわのいい匂いがする髪も好きだ。
切れ長の、でもくりっとした目も好きだ。
鼻筋のしゅっと通った鼻も好きだ。
控えめに笑う口元も好きだ。
「そんなじろじろ見ないでくれへん?恥ずかしいわぁ」
「恥ずかしそうな顔じゃないですけどね」
「俺も見つめちゃってええってこと?」
「それはダメ」
布団を頭まで被ると剥ぎ取ろうとしてくる。
今すっぴんだし恥ずかしい、というかメイク落としたのこの人なんだっけ。なんでメイク落としとかできるの?……あ、女の人か。ってまた残念になってしまう、やめよう。
考えてる間に先輩の力に負けてしまって、布団が取られる。
「あ、ちょっと」
そして、顔を覗き込む。
「入ってもええの?俺寒いんやけど」
「今32度記録してんですけど外」
「クーラーがな」
「嘘つき」
「そんなん言うなら入っちゃお」
謎である。
普通にしててもそんなに広くないシングルベッドなのに、いくら細いとはいえ野球選手の先輩が入ってきたわけだから、相当に狭い。身動きがほとんど取れない。それが目的なのかもしれないけど。つくづくずる賢い男。
「先輩ちょっと、狭いんですけど」
「えー?俺はちょうどええと思う」
「ちょっと」
「ん?……あ、なんかAあったかくて気持ちええなあ」
ぎゅう、と抱きしめてくる。最初からそれが目的だったくせに。
私が先輩と逆方向を向いていていわゆるバックハグのかたちになっているから、視線が合わないことだけが唯一の救い、だと思ったら。
先輩の手が少しずつ上に登ってくる気配に気がつく。
「せんぱい」
「ん?」
「……馬鹿っ」
脚で先輩のいわゆる急所を思い切り蹴ると手は離れて、
「お前それ興奮するだけやで」
と意味不明な言葉を呟いて床に倒れ込んだ。
……野球にさえ影響なければ、いっか。
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ちゃみ - お話惹き込まれて一気読みしてしまいました…!ドストライクで凄く好きです。素敵なお話をありがとうございます。いつかまた更新されることを願っています! (2021年5月6日 0時) (レス) id: d0e9746bc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縁 x他1人 | 作成日時:2019年7月24日 22時