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「何やってんだ？」
「……」
見つかってしまった。ただ立ち尽くすAに、風丸はもう一度「どうしてここにいるんだ」と問い掛けた。
顔を背けたが、すぐに無理やり顎を掴まれ、上げさせられる。風丸の手は冷たく、乾いていた。
「なあ、A。俺はお前を愛しているんだ。お前しか愛せないし、誰かに愛されることもないだろうな。俺はひとりだ。それなのに、Aは……ひとりの俺から逃げるんだな」
怒りとかなしみがいりまじった彼の顔が、とたんにふるえる。
何でだよ、と小さく呟いた。
それからこうも呟いた。
『俺はこんなにも……愛しているのに。』
しばらく二人で立っていたが、急に風丸が凄まじい勢いで土足のまま家に上がった。
それから台所に入り、家にあるなかでいちばん大きい包丁を持って戻ってきた。
「あ、かはッ……ひ」
何をするんだろう。
ゆっくりと近づいてくる風丸の影に押し潰されそうになる。
痛いのは御免だ。このまま失神して目を醒ますことなく逝けたら。
「ゃあ……ヒ、ッあ……ぁあ」
やめて、と声に出せないのだ。奪われた声は戻るのだろうか。今更そんなことを考える。もう死ぬかもしれないのに。
無惨にも振り下ろされる刃先がきらりと光る。
勢いがあるほうが痛くないって誰かが言っていたかも。そうだ、もともと風丸さんは優しいんだ……。
どうしてこんな風になった？
「やっと起きたか」
「痛かったよな。ごめんな、もうしないから」
「気を失って一週間ほど経つから、もう目を覚まさないかと思って」
さみしかったよ。
この男はまだそんなふざけたことを言う気力があったのか。
とりあえず体を起こそうとする、が。もう左右に腕はなかった。あるのは白かったであろう包帯にべっとりとつく固まった黒い血だけだった。
「……？」
ビリ、という、心臓が張り裂けるような痛さが全身に走る。
どういうことなのかさっぱりわからない。あのとき何があった？ ……思い出せない。
状況から察するに、風丸さんにやられたとしか言いようがない。
足もなくなっていた。裂けた皮膚から出た血が腕と同じように固まっていた。
歩けない。サッカーもできないし、ふつうに生活することさえも困難になる。
ふつうの人なら冷静ではいられない場面なのだが、ここ数日でいろいろなことがありすぎて……Aは泣くことさえできなかった。
そんなAを見て、風丸はにこりと笑う。
続く
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御津(プロフ) - 棗野 ｡さん» あの、すいません。最近めっきり更新をなさっていない様なのですが、大丈夫でしょうか？受験で忙しいであろう所こんな書き込みをしてすいません…早めの返信、お待ちしてます… (2016年10月24日 13時) (
レス) id: cf5df0bfea (このIDを非表示/違反報告)
ラハル - どのお話もとてもおもしろかったです！私は切ないお話を書くのが苦手なのでうらやましいです！！爽やかな風丸もいいけどヤンデレ風丸もいいですね。つづきまってます＾＾あ、あとリクで不動をお願いしてもよろしいでしょうか？ (2016年6月4日 18時) (レス) id: 72f2e436b7 (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - お話見ました！風丸さんの心情を考えると少し切なくなりますね…次回更新も応援しております！ (2016年6月2日 19時) (レス) id: cf5df0bfea (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - 棗野 ｡さん» 受験お疲れ様でした！今回のお話も凄く面白かったです。足取りが重いって事は、風丸も風邪を引いたって事ですかね…？次回更新も応援してます！ (2016年4月3日 13時) (レス) id: 96c409f13d (このIDを非表示/違反報告)
神子 - 棗野 ｡さん» 今回の話もとても面白かっです！風丸がこれからどうするのか続きが気になります…！ (2016年1月24日 19時) (レス) id: 1303644707 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：棗野 。 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/simeyo/
作成日時：2013年6月9日 22時
