心も体も縛り付けて＊風丸一朗太 ページ30
――好きだからいいと思っていた。好きでいてくれてるからいいと思っていた。
だけど、それも今日でおしまいかもしれない。
Aは学生服のすそをぎゅ、と握った。大丈夫だ、心配ないと自分を励ましながら足を動かした。校内の空気は生あたたかく湿っている。口からその空気をいっぱいに吸い込み、その開いた口をむすんだ。そしてまた、開いた。
「か、風丸さんっ」
「……あぁ！ A、いつ来てたんだ？ 来たなら言ってくれよ、心配したぞ？」
「あの、俺風丸さんに――」
思いきって、話がある、と言おうとしたそのときだった。風丸がそのぱっちりした目を細めて、Aを一瞬だったが、睨むところを見たのは。
「ん？ 縄で縛ってほしい、とかか？」
爽やかな笑顔だが、その裏では妖艶な表情をしてみせ、そしてさらっと言った。その彼はもはや成人した男の姿ではなく、裏の世界で生きる女のようにも見えた。
「っな、ちが……」
変わらぬ爽やかな笑顔を作りその顔を焦るAに向ける。風丸一朗太という男は、そういうところがこわいのだ。
間をおいて、自分自身に大丈夫だと言い聞かせた。
それから下を向いて口を開いた。
「あの、さ」
「別れてほしいんだ」
風丸の顔なんか見れやしない――怒っているか、寂しそうにしているかなんて――そんなことは、どっちだっていいのだ。
彼がこの別れを承諾してくれるかどうか、ということだ。
「どういうことだ？」
声には怒りが含まれている。
そうだろうと思った。Aは顔を上げた。
「風丸さ、」
「何でだ？ 俺が何かしたか？」
「違う、風丸さん、」
「俺のこと嫌いになったのか？ なぁ、それとも違う奴を――それなら、」
「風丸さん聞いて！」
言葉を遮って一旦場を制すると、風丸は黙った。怒りのせいか、彼は震えて下唇を噛んでいた。
「――風丸さんのことが嫌いになった、とかじゃないんだ。それは絶対だ。ただ、俺、縛られんの、嫌なんだ。他の誰かとちょっと話しただけで怒るとか、そんなの、俺が好きな風丸さんとは違うと、思って……」
「だから、距離を置こうよ。風丸さんのそれがなおったら、また付き合ってもいいと思う」
Aは息をのんだ。風丸は目を伏せていた。
「――わかった」
＊＊＊
続きは土曜日にupします！
更新遅れてすみません。
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御津(プロフ) - 棗野 ｡さん» あの、すいません。最近めっきり更新をなさっていない様なのですが、大丈夫でしょうか？受験で忙しいであろう所こんな書き込みをしてすいません…早めの返信、お待ちしてます… (2016年10月24日 13時) (
レス) id: cf5df0bfea (このIDを非表示/違反報告)
ラハル - どのお話もとてもおもしろかったです！私は切ないお話を書くのが苦手なのでうらやましいです！！爽やかな風丸もいいけどヤンデレ風丸もいいですね。つづきまってます＾＾あ、あとリクで不動をお願いしてもよろしいでしょうか？ (2016年6月4日 18時) (レス) id: 72f2e436b7 (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - お話見ました！風丸さんの心情を考えると少し切なくなりますね…次回更新も応援しております！ (2016年6月2日 19時) (レス) id: cf5df0bfea (このIDを非表示/違反報告)
御津(プロフ) - 棗野 ｡さん» 受験お疲れ様でした！今回のお話も凄く面白かったです。足取りが重いって事は、風丸も風邪を引いたって事ですかね…？次回更新も応援してます！ (2016年4月3日 13時) (レス) id: 96c409f13d (このIDを非表示/違反報告)
神子 - 棗野 ｡さん» 今回の話もとても面白かっです！風丸がこれからどうするのか続きが気になります…！ (2016年1月24日 19時) (レス) id: 1303644707 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：棗野 。 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/simeyo/
作成日時：2013年6月9日 22時
