それだけだよ◆13.03.20 ページ9
＊
人1を見送ったら、一人で顔を洗い、着替えて、
いつものビルでスタジオを借りて、歌の練習をする。
人1が歌を辞めて以来、ほとんど来なくなった場所だ。
実は今日も一緒に練習しようってなってた白服さんを待ちながら、
俺はスタジオ内を歩き回った。
マイク、ピアノ、スピーカー、
いろんな機材があって、棚には色んな資料がぎゅうぎゅう詰めになっている。
生徒のファイルがあったはず。
個人情報とかじゃなくて、写真とか、成長記録。
俺の記憶が正しければ、人1のは…。
「…あった」
下から四段目。
棚の端に立てかけてある、ピンクのファイルが、三冊。
人1は歌のレッスンを辞めた。
なのに、先生はいつまでも、このファイルを教室に置きっぱにしている。
先生は今も、人1が歌のレッスンを再開するのを、待っている。
パラパラ、と中身を見た。
歌を始めたのは、確か小一の時。
キッズレッスンにしては、そんなに早くない。
でも人1は、凄いスピードで上手くなった。
人1は天才だった。
今思い返すと、本当にそう思う。
先生が教えたことを、一度見ればすぐに真似することができた。
いつも大人しいのに、歌を歌い出すと、
表情豊かで、たくさんの人を楽しませた。
人を楽しませる術を知っていた。
多くの人を呼んだ発表会。
色んな大人が人1を審査する、プロのコンテスト。
それぞれの記録がちゃんと残っている。
写真の人1は、マイクを握って笑っている。
三冊目のファイルのページをめくっていると、
突然、白紙になる。
記録が残っている最後のページは、あの時。
うめさんのコンサートの、その日。
その次の日のコンテストの、リハの日。
「何見てるの？」
「うわっ！」
驚いて飛び上がり、
そのファイルを慌てて背中に隠す。
「っ白服さん！いつの間に」
「おはよ、それ、Aちゃんの？」
「…うん」
ファイルを元の位置に戻す。
「……ここってさ、Aちゃんも使ってた歌の教室なの？」
「…」
「あ、詮索するつもりは無くて、単純に気になっただけなんだけど」
…いつか、言わなきゃ。
白服さんだけじゃなくて、むすめん。のみんなには。
「Aは、今も歌が怖いの」
ホントは、俺もよく分からないんだけどさ。
「…それだけだよ。ここは、Aが毎日のように来て歌って場所。今は、来てないけど…」
「…」
「でもAは、今が楽しそうだから、大丈夫」
脅迫されてて◇13.03.20→←言葉選びの◇13.03.20
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ひな(プロフ) - ご指摘ありがとうございます！！申し訳ありません、うっかり忘れてました…(_ _)更新頑張ります、よろしくお願いします…！ (2018年10月7日 19時) (
レス) id: 81ab03c3d0 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 楽しみにしてます！これからも更新頑張ってください〜！あ、あと(人1)の変換ないので作るか全て(名前)に統一して下さるとありがたいです！ (2018年10月7日 16時) (レス) id: aa9580c9fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひな | 作成日時：2018年10月6日 5時
