もしも魔法使いになれたらIV (ページ11)

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白服さんは、優しい目付きで、
自分の掌を見つめている。

「そんな人たちを、守ろうって思ったの。

天性の才能があって器用なぷんちゃんとか、
怖いもの知らずで敵無しのあおいくんとか、
僕が守んなくても大丈夫なくらいだけどさ？

今すぐ隣にいる、芯の強い大切な後輩のことも。
僕が、守ってあげたいの。
それくらい、強くなりたい」

白服さんは、その手のひらで箒を握ると、
私に笑いかけた。
「そう思わせてくれたの、Aちゃんでもあるからさ。もっと自信持っていいよ」

「…白服さんが代表生で良かったです」
「ありがと」

アルカディアが見えてきた。
地上に向かって、下降していく。

「あっ！Aいた！」

校庭で飛び跳ねてこっちを見上げるのは、あおい。
「夜通し訓練してきたのー？体大丈夫？」

「一応寝たから大丈夫！」
あおいが持ってる鞄を受け取る。
もちろん周りの生徒はみんな、登校中だ。

白服さんと、あおいと並んで歩き出す。
すぐに他愛ない会話が始まって、

途中で、後ろから追いかけてきたとみたんや、のっくんと合流する。
げるたんと、二番くんとも。
みんなで騒ぎながら歩くのは、楽しくて仕方ない。
本当に、日常が戻ってきた感じがする。

ちょっと違うのは、

隣を、のっくんが歩いているということだ。
何度も夢に見た。
でも今は、夢じゃない。

校舎前の大広場、
よくここで、あおいと魔法の練習をしたなぁ。

あれから何か、変われただろうか。

インセンディオを習得しただけじゃなくて、
ホワイトローブを貰っただけじゃなくて、
特殊魔法の使い手に弟子入りしただけじゃなくて＿＿＿

「A？」

至近距離で前に立ちはだかったあおいに名前を呼ばれて、
はっとして顔を上げた。

「A、予鈴鳴ってるよ？急がないと」
あおいの背後を見たら、みんなはもう駆け出していた。
「あぁ、うん」

あおいはローブを翻して、駆けていく。

その背中を追いかけた。

…治癒魔法はいつ出来るようになって、
私の病はどうなるんだろう。
これからウランとの関係はどうなって、
ウランのげるたんは、のっくんの体調は、

……どうなるか、分からないけど。

分からないから、

「あおい！」

振り返ったその瞳を見つめた。

「私、魔法使いになるよ。

それで、いつか、もし」

私の声に気付いて、あおいの前にいたみんなもこっちを振り向く。

私がこれまで得たのは、
かけがえなのない、

私のすべてで、
私を強くしてくれて、
私が大好きな、みんな。

「もし、魔法使いになれたら」

＊end＊