【刀剣乱舞】右手に黒薔薇、左手に拳銃 (ページ10)

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6話｢それはきっと、彼には不本意。｣ページ10

それで、と僕は続けた。

｢今から行く場所は『災厄指定本丸』と呼ばれる場所なんだ。あ、これは秘匿情報だから他者に漏らさないように。……『災厄指定本丸』とは、何かわかるかな｣
｢ううん、分からない｣

当然だと言うように首を振る蛍丸に、簡単に、簡潔に言葉を紡ぐ。

｢ブラック本丸と呼ばれる審神者があくどい(・・・・・・・・)、あるいはあくどかった(・・・・・・)本丸……のなかでも、タチの悪い悪化の経路を辿った本丸のことを言うんだ。今回僕達が向かうのは、人殺しの付喪神がいる本丸だね｣
｢人殺しの付喪神……ちょっと待って主さん、その言い方だと、刀剣男士の誰かが人を殺してるってことになるよ!?｣
｢そうだよ｣

こくりと頷くと、蛍丸の目は見開かれた。そして、それまで僕に向いていた視線が雪落に向く。何か言いたげにムッとして。

｢……刀剣男士(俺たち)が人を殺すのは、ご法度じゃないの？放置してるってこと？｣
｢好きで放置してるんじゃない、放置せざるを得ない(・・・・・・・)んだ。我々が今回処分しなけりゃなんない『目標(ターゲット)』の情報が、その本丸にしかほとんどない｣
｢ふーん……｣
｢こっちも必死なんだ、歴史を守るために。何が言いたいかは分かるが、分かってくれ、蛍丸｣

ムッとしたまま、蛍丸は雪落と僕を見比べる。

｢主さんはそれでいいの？主さんも殺されるかもしれない｣
｢大丈夫だよ、僕はプロの暗殺者だから。そもそも『依頼達成率100%』の名誉にかけて、殺されるような真似をするわけがない｣
｢でも……｣
｢蛍丸。僕は君が思うほどの人間じゃない。暗殺者とはそういうものなんだよ｣

しばらくの沈黙の後、今度はシュンとした様子で蛍丸は口を開いた。

｢……分かった。主さんがそう言うなら｣
｢分かってくれてありがとう｣

また蛍丸の頭を撫でる僕。するとグイッと手が退けられてしまった。先程までとは種類の違うムッとした表情をしながら。

｢なでなでしすぎ。背が縮んじゃう！｣
｢おや、ごめんね。でも撫でる程度で背が縮むほど人の身は脆弱には出来ていないから、心配しなくても背は縮まないよ｣
｢それは……えっと……｣

今度はしょもしょもと下を向いた蛍丸。表情の変化は一般的な人間(子供)より少ないが、その機微を読み取るのは残念ながら得意なんだ。

さて、と、ここで息をつき、もう一度蛍丸を見据える。

｢プランをいくつか考えよう。本丸突入のための｣