【刀剣乱舞】右手に黒薔薇、左手に拳銃 (ページ9)

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5話｢それはきっと、実に実用的。｣ページ9

｢……？ここ、本丸じゃない？｣

目の前の彼、｢蛍丸｣は首を傾げた。まあそれも当然かもしれない。

｢アンタ、何故こいつを選んだ？大太刀も扱いは槍や薙刀同様1度振るのに時間がかかるぞ｣
｢いや、そんなことはないよ｣

雪落が神妙な顔をして僕に聞いてきたから、僕は即座に否定した。彼を選んだのには、明確な理由があるから。
蛍丸の頭を撫でながら、僕は顔は雪落に向けながらこう言った。

｢大太刀とはいえ、他の大太刀達と比べてリーチが短い。かといって短すぎるというわけでもない。僕の邪魔にならず、かつ適切に相手を攻撃出来る完璧な長さだよ｣
｢……ほう？｣
｢そして彼は小柄だ。小柄であるということは、小回りが効くということ。これは『狩場』においても重要視されることだ｣
｢なるほど、合理的だねぇ｣
｢そしてそんな小柄な彼は、小柄ながらに大太刀という大きく力のいる武器を扱える。……ということは、彼は最初からある程度の戦闘力があるということになるよ。これは最重要項目｣

下を向き、両手をパッと横に上げる雪落。首を振って、はっ、と息をつくとやれやれと笑いながら答えた。

｢実に合理的(・・・)だよ、合理的すぎるくらいにはな。もっと顔の好みで選んでも良かったんじゃないか？｣
｢そんなもので選んでいては命を失うよ｣

ここでくいっと蛍丸が僕の服の袖を引っ張ってきた。何か言いたげに、ほんのりムッとした顔をして。

｢主さん達はさっきから何の話をしてるの？俺を褒めてくれてるのは分かるけど｣
｢ああ、そうか｣

政府に貯蔵(保管)されていたとしても、｢政府刀｣ではない彼は当たり前のようにただの刀剣男士だ。こんな風変わりな顕現をされるとは思っていなかっただろうから、何も知らないのだろう。

これから蛍丸を初期刀として据える予定の僕は、じっと蛍丸の目を見ながら全ての事情を話すことにした。

｢僕は、時の政府に雇われたプロの暗殺者……『censor(センサー)』と通り名がついてる者だよ。時の政府に依頼をされて、とある人物を処理(・・)する予定なんだ｣
｢あ、暗殺者……!?｣
｢そのために、ある本丸に向かわないといけないんだけれど……そこには審神者の体で行く(・・・・)から、初期刀を励起させなければならなかった。そこで僕が選んだのが、あなた｣
｢初期刀は打刀5振りの中から選ぶんじゃないの？｣

きょとん、と首を傾げる蛍丸に僕は言う。

｢これくらいの自由は許されて然るべきだ｣