【刀剣乱舞】右手に黒薔薇、左手に拳銃 (ページ28)

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24話｢それはきっと、それなりの手練。｣ページ28

｢それで、その場所だけれど｣

ある者は首を傾げながら、全員が僕を見た。分からないというように。……まあ、実際分からないんだろう。

｢2000年代初頭の歌舞伎町、か。香水も納得だ｣
｢歌舞伎町って？芸事の歌舞伎と関係あるの？｣
｢いいや、ないよ｣

さらりとした前髪を傾けながら、水色の瞳で僕を覗いてきた乱に僕はふるふると首を振った。

｢歌舞伎町というのは東京にある歓楽街のことだ。なぜ歌舞伎町という名前なのかまでは……ちょっと僕も分からないけれど｣
｢歓楽街か……あまり雅じゃないね｣
｢歌仙は嫌うタイプの街だと思うよ。何せ人間の欲がそのまま蠢いているかのような場所だから｣

僕が歌仙に告げると、ただでさえ険しくなっていた顔がさらに険しくなった。はあっとため息をつき、雅じゃない、と呟いている。

｢で、詳しい年代も場所も分かったんだ。こいつのとこに突撃……ってわけにゃいかねぇんだよな？｣
｢ああ。少なくとも彼女はあなた達の元主に暗殺術を仕込む程度の腕はある｣

和泉守に頷いた。手紙の内容から、彼女が｢的(ターゲット)｣に対し暗殺術を教えたことが分かった。そして｢裏｣での動き方も。そうなれば、彼女はそれなりの手練だ。｢裏｣の事をわざわざ教えられる(・・・・・)ということは、本人もそれなりの腕を持っていることが確実ということになる。

｢でも、少なくとも今のあの人の動向を知っているのはこの女性しかいませんよね。どうするんですか？｣
｢そこが問題だ。少なからず、僕達は彼女に接触する必要がある。それで｣

するっとポケットから拳銃を抜き出し、片手でくるくると回して僕は自分のこめかみにその銃口を向けた。

｢場合によっては殺す｣
｢……殺す、ねぇ……んな簡単に行くとは思わねぇが｣
｢場合によっては、だよ。手紙の彼女が余程醜悪でなければ、時の政府に差し出す程度で済ませるさ。まあでも｣

そうはいかないだろうね、と呟く。なぜなら彼女も｢歴史修正主義者側｣だから。それも他者にスパイ行為をさせるほどの、何かしらの悪質さ(・・・)がある。

｢主さん、『的(ターゲット)』以外を殺しちゃっていいの？｣
｢構わないよ。『censor(センサー)』としてだけ動いてたならまだしも、『ハイドレンジア』としても動いてるんだ、今は。つまり、差出人の彼女を殺す時は『ハイドレンジア』として殺せばいい｣

まあそんな時は来ない方がいいんだけどね、と拳銃をポケットにしまった。