21話 ｢それはきっと、判別不能。｣ ページ25
ハンマーを持ってきた僕と蛍丸は、もう一度審神者部屋に戻ってきた。
｢戻ってきたよ。何通あるか、分かったかな｣
｢最低でも12通はあるよ。あと、これはボク個人の感想なんだけど｣
乱が顔をしかめて言う。
｢この中、すごく香水くさい｣
｢香水｣
｢ああ、それは僕も思ったんだ。やけに香水の匂いがするんだよ｣
｢俺も分かる。中がというよりは……手紙だろうな｣
歌仙と山姥切が続けて言った。ふむ、香水か。まあ、とりあえずは手紙を開けてみないことには分からないだろう。
｢置物は粉々になってもいいかな。掃除が大変だけれど。まあそうなっても、ここは僕の部屋になるのだから、責任もって僕が掃除をするよ｣
｢ああ、どうなっても構わない｣
では、と蛍丸にハンマーを渡した。
｢俺？なんで？｣
｢この中で1番力があるのは蛍丸だろう。だから、蛍丸にこれを壊して欲しい｣
｢そういうことか。分かった、俺がやるね｣
5人には穴が上になるように固定して置物を床に置いてもらい、その前に蛍丸がしゃがむ。
｢行くよー。とうっ｣
振り下ろされたそれは、ゴッと音を鳴らし見事に大理石を破壊した。しかしこの程度の穴では取り出すのが大変だ。
｢蛍丸、もう一度｣
｢ん。ていっ｣
確かに当たったその鈍器は、見事に置物の底の穴を広げた。うん、沢山の手紙がそこに入っている。一通を取り出し、開けてみた。中身は……。
｢……ごく普通の内容だね。相手は女性のようだ。
｢主さんが読んでも、裏じゃないの？｣
｢裏の言葉は見るだけでよく分かるよ。でもこの手紙の内容は、なんてことないごく普通の内容だ。一般的な、友人同士が送るようなね。そちらはどうかな｣
他の手紙を読んでいる5人にも問いかけた。誰もが難し顔をし、困惑している。
｢どれも普通だ。てっきり悪〜い内容が書いてあるのかと思ったが、そんなこたぁないようだぜ｣
｢俺が読んだ物もです。普通の、なんてことない内容ですね｣
｢Aさんなら裏に隠された意味が分かるかと思ったけど……Aさんが読んでも普通の内容なら、じゃあなんで隠されてたんだろう｣
じっと、思考を巡らせる。そして手紙を観察し、ある
｢あなた達、香水の匂いがすると言っていたね｣
｢ああ、言ったな｣
｢困ったなあ、紅茶以外の匂いの判別は得意じゃないんだけれど｣
そう言いながら、すんすんと手紙の匂いを嗅いでみた。
22話 ｢それはきっと、隠された筆跡。｣→←20話 ｢それはきっと、信頼による弾丸。｣
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作者名：蜂蜜パスタ | 作成日時：2024年1月14日 12時
