【刀剣乱舞】右手に黒薔薇、左手に拳銃 (ページ16)

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12話｢それはきっと、どうでもいい話。｣ページ16

｢僕はあなた達に選択権をあげよう｣
｢選択権だと？……なんのだ｣
｢僕に依頼するか(・・・・・)、しないか(・・・・)だよ｣

引き金に指をかけ、くるくるくるっと拳銃を3回転させてから僕はそれをポケットに仕舞う。

｢あなた達の審神者は『歴史修正主義者のスパイ』だったんだろう｣

そう言うと、全員が反応した。その反応(・・)を、僕は見逃さない。

｢……そうだ｣
｢ということは、政府も裏切られたことになる｣
｢……｣
｢政府を裏切った審神者ではなく、審神者に裏切られた政府を攻撃するのは、何故だい｣
｢……元々審神者は俺たちを放置していた。手入れもたまにされれば良かったくらいだ。それを知っていながら、政府は何もしなかった｣
｢ほう、これはこれは。情報にはなかった話だよ｣

時の政府も、やはり組織は組織。都合の悪いことは隠したかったのだろう。そういうものだ。しかし、だよ。

｢だからといって、職員も、引き継ぎの新しい審神者も、その初期刀も、全て殺す必要などなかったんじゃないかい｣
｢あんたには関係はない……関係ない！｣

山姥切国広が、刀を構えてこちらに向かってきた。仕方が無いので拳銃を取り出し、一発撃つ。その柄目がけて。
ダンと一発撃ち放たれたそれは、きっちり狙い通りに柄に当たり刀を吹き飛ばした。

｢っ!?｣
｢悪いね、得意なんだ。それで、あなた達の言いたいことはなんとなく分かるよ。なんとなあくだけど。でもね｣

再び拳銃を仕舞いこみ、僕は淡々と告げる。

｢僕は、あなた達の誰が何人(・・・・)殺してきたかなど、全くもってどうでもいい(・・・・・・)。それに君たちは、きっと自分が誰を何人殺したのかも、覚えているんだろう。偉いじゃないか。優しいね、あなた達は。美しい(・・・)よ｣
｢何が言いたい……｣

警戒しながら、しかし先程よりも様子の違う山姥切国広に、僕は両手を横にし顔の横に持ってきて、さも当然というように答えた。

｢僕は誰を何人殺したかなんて、覚えてないからね。次の日の朝起きて、朝食のサンドイッチを食べる頃には、もうすっかり忘れてる。いいかい、忘れているんだ。どうでもいい(・・・・・・)から｣
｢……待て、その言い方だとあんた、まさか｣

刀を再び掴み、しかし僕に刃を向けることはしない山姥切の疑問に、僕はこくりと頷いた。

｢そう、僕はプロの暗殺者だよ。裏社会の存在だ。人殺しは慣れている｣