10話 ｢それはきっと、明確な殺意。｣ ページ14
｢A。一応、担当は俺ってことになる。なんかあった時は、ほれ｣
文字を打ち込みながら、雪落は胸元のポケットから何かを取り出した。……最新の通信機か。
｢そいつで連絡を寄越しな。直接俺に通じるから余計な手間は省ける｣
｢ありがとう。助かるよ｣
それを受け取った僕は、ズボンのポケットに仕舞いこんだ。
｢よし、接続完了。念の為部下を通じて
｢ああ、分かってる。
｢俺も主さんを守るからね｣
｢ん、行ってこい。健闘を祈っている｣
その合図と共に、僕と蛍丸はゲートの奥へと歩みを進めた。
｢主さん｣
｢どうしたの、蛍丸｣
｢絶対に死なせないからね｣
｢僕は死なないよ｣
景色が、変わっていく。恐らく本丸に近づいているのだろう。そして同時に伝わってくる、あらゆる殺気。これはこれは、この種類は。
｢……蛍丸、まずはプラン8から行動するよ｣
｢はーい｣
呑気そうに、だが決意を込めて蛍丸は返事をする。既に覚悟は決まっているようだった。
目の前にあった鳥居をくぐり抜けた、その瞬間──。
｢っ、プラン10だ蛍丸っ｣
瞬時に蛍丸は刀を抜き、同時に僕はその場から飛び上がり近くの木の枝に着地する。
蛍丸と鍔迫り合いにあり、まさしく僕を殺そうとしていたその刀剣男士は……。
｢へし切長谷部だね｣
｢殺し損ねたか｣
ニヤリと、だが明確な攻撃意志を持ってへし切長谷部は笑う。
｢おっと、これはまずい｣
慌てて再び飛び上がり、へし切長谷部と蛍丸より少し遠い岩の上に立った。僕がそれまでいた木の枝には、もう既に別の刀剣男士がいる。
｢……逃がしませんよ｣
｢鯰尾藤四郎か｣
彼、データベース上での情報では少なくとも温厚そうだったんだけどなあ。ここの彼は随分と殺気立っている。
｢僕が死ななかったことに、驚かないんだね｣
｢今までにも、多少強い人間くらいはここに送り込まれてきていますからね｣
｢おや、彼らは既に僕以外にも試していたのか｣
へし切長谷部が後ろへ下がり、まっすぐ僕の元へ駆けてくる。わあ、速い。でも残念。
｢蛍丸、おいで｣
ばっと岩から走り抜け、本丸の母屋を目指した。それまでにも、いくつもの殺意が降り注いでくる。
何人もが僕を切り伏せようとし、その度に僕は避けた。
11話 ｢それはきっと、当然の疑問。｣→←9話 ｢それはきっと、決定的な案。｣
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作者名：蜂蜜パスタ | 作成日時：2024年1月14日 12時
