【刀剣乱舞】愛せないから愛させない。*弍色*

57色目 ｢この世で1番とまではいかないが見たくない色だな｣。 ページ12

｢沖田総司って知ってる？｣
｢いや？ 知らん｣
｢え……｣
｢ごめん冗談だって、そんな顔すんなよ……新撰組の人だろ｣

いきなり何を言い出したかと思えば、その口から出てきたのは歴史上の偉人。なんとなくからかったらすごい顔されたよ。一瞬馬鹿だと思われたんだろうな。ごめんもう二度とからかわない。

｢俺その人の刀だったんだけどさ──｣

そう言い、加州は語る。新撰組の沖田総司を、語っていく。他にも話してくれた。加州と共に沖田総司に使われていた｢大和守安定｣のこととかな。
加州は本当に楽しそうに語っていた。よほど沖田総司に大事にされ、そして加州も沖田総司を愛していたんだろう。

ただその話がしたかっただけ？ なんて思いながらうんうんと聞いていると、少しずつ話が変わっていった。……なんか色がおかしい。


｢……あの人も、別に最初っからあんな酷かったわけじゃないんだよ｣
｢ん？｣
｢主の……ああ、前ここにいた審神者のこと。俺はある…前の主の初期刀だから色々見てきたんだよ｣

目を伏せ話す加州。
待って待って、色が、変わってきてる。

｢最初から酷かったんじゃないって……まじかよ、私は色んなヤツらの話からてっきり最初から極悪非道なクソ野郎だったと勝手に思っていたんだが｣
｢違う。最初は本当に普通だった。普通に笑って普通に喋って、普通に仕事してて、本当に普通の日々だった｣
｢……冗談じゃない｣
｢疑ってんの？ まあ無理もないよねこんなことになってんだし……｣
｢……。こういう……風になった、きっかけみたいのは、知らないのか｣

意図せぬうちに声が震えた。だって私はこの色を知ってる。

｢知らない、気づいたらこうなってた。気づいたらもう、手遅れだった。俺達がなんかしたのかもしれないし分からない……なにかに悩んでたのかもしれないし……俺ずっと近侍やってて、それで出陣して鍛刀も手伝って色々して……それで……えっと、短刀とか脇差のやつらしかあんまり来なくて……それが主の考えてたことと多分違ったんだ……そうだ……｣
｢か……加州？｣
｢……それからそう……小夜左文字っていうのがいるんだけど、その小夜が来たあたりだから……俺が主に顕現されて多分、5ヶ月くらい……してから……とくにひどくなってって、俺……俺がなんかしたのかな……｣
｢おい、か、かしゅ……｣

お前は刀だろ。刀がなんでそんな色してる。

加州が纏うその色は、私が鏡越しに何度も見たメンヘラ(ボダ)の色だった。

58色目 ｢自分がボダだからってボダの他人の扱いは分からない｣。→←56色目 ｢月明かりの下はロマンチックだが今は気分じゃない｣。

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