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3年前の11月7日。
親友を殺しかけた爆弾魔からの予告をうけて俺はゴンドラの前に佇んでいた。
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[これで死ぬかもしれない]
ふとそんな予感を抱きつつ中に足を乗せたその時、アイツは現れたんだ。
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「それは私たちの獲物なんだ。良ければ譲ってくれないかな、」
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赤毛を靡かせ、漆黒のコートを舞わせたソイツは少しだけ口角を上げて言った。
だがそれは完全に作りもの。
瞳に残されてもいない光には恐怖さえ覚えた。
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「一般人がなぜここに..!危ないから下がっていなさい!」
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白鳥が誘導に回り、俺はその隙に乗り込もうとした。
もちろん一人で、だ。
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「ああ、そう。」__..その言葉こそ悪魔だった。
ゴンドラの揺れと扉の閉まる音、後ろからの圧迫感。
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「なら悪いけど道連れになってもらうよ。__..オニーサン、」
「ば...っ!!」
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理解に少し時間がかかった。
俺の後ろにいたはずのヤツが俺の前に座っていて、俺と一緒に観覧車に乗ってやがる。
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事実が事実として受け入れられない中、ヤツは爆弾を見ても動揺せず、むしろ興味深そうにしていた。
なんなら楽しそうだと言ってもいい。
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「馬鹿かテメェは!死にてーのか!!」
「死にたくはないけど。言ったろ?これは“私たちの獲物“だって」
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首を突っ込んだのはソッチだ__..それが正論であるかのようにソイツは言った。
怒る以前に爆弾の解除が優先。生きて帰りゃたっぷりしごける。
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そんな考えは呆気なく捨て去ることになった。
爆発3秒前、それは俺に課せられた最後の仕事だった。
一般人だけでも助けてやりてーけど..悪いがンなこと言ってる余裕はねェ。
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「悪りぃな、ほんとに道連れになっちまうみてーだ」
「道連れにしたのは私だから謝るのは君じゃないと思うんだけど、」
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変な人だね。なんていうソイツの言葉に耳を貸せるくらいにはなった。
死に際ってのはこんなに呆気ないもんなんだな、ほんと、なんて馬鹿なこと考えて。
..
禁煙の内で煙草をふかす中でふと、ソイツは俺に話しかけてきた。
ただの世間話でもするかのように淡々と。
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「オニーサン、名前なんて言うの?」
「名乗って欲しけりゃまずはテメーが名乗るんだな」
「教えたくても私名前ないから教えられないんだよ」
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残念ながら、なんてあっけらかんというその姿に違和感を覚える。
多分コイツは一般人じゃない。__..そんな、訳もない勘だけが頼りだった。
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作者名:夾 | 作成日時:2021年9月4日 11時