4 ページ4
「汚い部屋やけど、入ってな」
『いいの、お邪魔します』
律儀に靴を揃えて入るみなみ。
一段落ついて、俺らはソファに座った。
『日本に、帰ってきてよかった』
「お前、ほんまな…女優やってんねんやろ」
というと、眼を真ん丸にした。
『何、知ってたの…?』
「知らんわけないやろ、妹の顔見て確信したわ」
『はは、ばれてたか』
笑った姿は傍から見たら嬉しそうに見えたが、何処か寂し気な表情にも見えて。
「…そういう笑い方も変わってへんな」
『そうかな』
「なんかあったんやろ、わらっとんのに、しんどそうにしかみえへん」
というと、みなみはまた目をまんまるにした。
『やっぱり、兄さんは凄いね』
『私、子役から10年、続けてきたの』
『でもね、お金も十分で。もう、何もかも満足しちゃって。』
『日本に戻るために、女優をやめたの』
…は?
「どういう、ことや?」
『…まだ、公には発表されてないけどね』
『時間かけて、さんざん手続きもして、やっと終わった』
『だから、今は無職の一般人』
「なんで、おまえ、」
『私が女優である以上、兄さんには会いに行けないって思ってた』
『…これは、私の判断だから…』
…そう、なんか。
俺からしたら、今のままで安定しとったし、うん。
…わざわざ、辞めることないやろ…
でも、みなみがそうやって決めたんやから、もう終わったことなんやから、俺がとやかく言える立場ではない。
「そうなんやな、分かった」
「日本帰ってきたはええけど、これからどうするんや」
俺に会いに来たとはいえど、これからなんてないやろうし。
ネットの情報では、5か国語話せるって言ってたからそういう仕事に就いたらええとは思うけど…
そんな就活が簡単やとも思えへんよな。
住むところやって、まだ決まってへんからな。
『大体は、決まってる』
『私を雇ってくれる、っていうところがあって。…ほら、日本に帰ってきたとき、カフェに寄ったら美人ですね、って勧誘された、へへ』
『あと、住むところもちゃんと決めた。…ここの、近く…たまたま、買ったところが近くて』
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←3
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:七瀬 | 作成日時:2018年12月11日 20時