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それから、俺はひっそり陰でみなみを見守ってきた。
外国を転々とし、忙しい妹の様子を。
…たくましい、俺なんかよりずっと。
そうやって、少し軽くなった心と共に俺も人生を歩んできた。
そんなときだ。
みなみが、目の前に現れたのだ。
衝撃的で、始めは声が出なかった。
『兄さん?…ごめんなさい、吃驚させちゃったね』
へらりと弱気な笑みを見せた。
「…あほ…なんで、分かったん…」
『兄さんが待ってるって言ったから』
『この街から、離れないって信じてたの』
『…するとね、私、神様が味方してくれたのかな』
『前の家に行ったら、私を知ってくれてる人がいて…兄さんの場所も知ってるって言うから、教えてもらったの』
『待ってた、おかえり』
ぽろぽろと涙が零れていく。
その涙を見て、昔を思い出してしまって。
「ただいま、おかえり、みなみ」
気付けば、みなみを抱きしめてしまっていた。
人通りが少ないとは言えど、マンションの前な訳で。
通りゆく人の視線を感じる。
でも、それすらも気にならないくらい、今は嬉しかった。
『お兄、ちゃ、んッ』
そう呼ぶ姿はやはり、昔と同じだった。
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作者名:七瀬 | 作成日時:2018年12月11日 20時