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「…っは?みなみ?」

『おかえり、久しぶりだね?』




過ごしやすくなった、秋真っ只中。

俺にとって、一番大きな出来事があった。



『会いたかったわ、兄さん』
そう微笑む姿は、まるで昔の妹とはかけ離れていた。

…美しく、なったもんやで。


「どういうことや、お前お母さんにどうやって説明したん、」


『何、もうお母さんは亡くなったの…聞いてない?』
悲しげな顔で、俺に語り掛けるみなみ。

「そんなもん、聞いてる訳ないやろ…絶縁したんやから」

俺の親父と母は離婚した。
原因は、母のストレスによる暴力だった。

父は気が強いタイプではないし、負けていた。
…はたまた、出来が悪いと言われた妹も酷い暴力を受けていた。

自分で言うのもなんだが、俺はなんでもできたし、顔の出来もよかった。
顔の出来なんて、みなみも昔からよかったけど。

俺は、母に愛されてた。たった、一人。


でも、離婚することになって。
俺は、正直どちら側に行ってもなんでもよかった。

…みなみさえ、守れれば。


でも結局、最悪の結果になってしまった。
俺とみなみが離れてしまった。ましてや、みなみは母の手に渡って。

どれだけ、辛くて泣いたか。
…可愛い、可愛い妹が守れないなんて。


連絡は取りあえるはずもなく、俺らは離れた。
みなみから最後に聞いた、居場所の手がかりは一つ。

…ドイツだった。

まだなんとも言えない歳だったし、一人でみなみを支えるなんて無理で。
俺も、精一杯やったから守る余裕なんてある訳もなかった。


それから、時は過ぎた。

今でもたまにみなみのことを思い出す時があって。
まだ母に暴力を受けてないか、とか…いろんなことを考えた。

俺もみなみも社会人になった。


そんな日、仲間から話を偶然聞いたのだ。


「なぁ、この女優さん知っとる?俺めっちゃタイプやねんけど!」


見た時、思わず目を疑った。
どこからどう見ても、みなみにしか見えなくて。


姿はだいぶ変わっていたけれど、普通に気づいた。

だって、血の繋がった、兄弟だから。

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作者名:七瀬 | 作成日時:2018年12月11日 20時

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