・ ページ3
『ん…………………ひっ！』
我に返った瞬間、その場の光景に悲鳴をあげた。
辺り一面に、ぐちゃぐちゃになった肉の塊と血溜まりが散乱していたのだ。
…………自分の手には深紅の液体と、人を殺すためのナイフ。
この状況から、私がこの人達を殺したのだと悟った。
「…………ぅ……………」
すると、微かに人の声が聞こえた。反射的に振り替えると、翔ちゃんがか細い声で私を呼んでいた。
「……………A」
『翔ちゃん！！』
私が側に駆けつけると、翔ちゃんは大量の血を吐き出した。
「がはっ……………」
『翔ちゃんっ……………まだ助かるかもしれない。いや、絶対に助け』
「聞け………………」ｶﾞｼｯ
翔ちゃんは静かに、でも力強く私の手を握った。
翔ちゃんも、解っているのだ。
自分がもう……………助からないという事を。
「よく聞け……………A。もう俺は、助からない。それくらいは自分でも解る…………だから、これだけは覚えておいてくれ」
翔ちゃんは荒い息を繰り返し、最後にこう言った。
「俺達は、家族だ。だから……………死んだ子供達の為にも……………生き、」
そこで言葉が途切れた。
翔ちゃんは、この日。この時。この瞬間。
短かった自分の人生に、終わりを告げた。
『……………………』
私がその場で立ち尽くしていると、後ろの方から声が聞こえてきた。
「いたぞ！実験室の餓鬼達だ！捕まえろ！」
多分、私達が居ないことに気がついて追ってきたのだろう。
大人達の足音が、一歩一歩と近づいてくる。
『翔ちゃん、さくら、ようすけ、あきら、りんか、あかね……』
私は、家族全員の名前を口にした。そして、
『ありがとう。安らかに眠ってね』
静かに、感謝の一言を告げた。
そして、一人走り出す。
私に出来ることは、ただひとつ。
皆の死を、無駄にしないこと。
二度と、大切なモノを失いたくないから。
『私…………………生きるよ、翔ちゃん』
今日というこの日を迎え、少女は変わる――――――。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゴミ箱センター | 作成日時：2018年9月21日 18時
