【文スト】一般人の中原です

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そしてまた、見覚えのある包帯が巻かれた手が、Aの手を取り握る。





「美しい髪色の君、どうか私と心中――」





男――太宰治は云い掛けた言葉を引っ込めてピシリと固まる。





それもその筈。





心中のお誘いをした女性が、大嫌いな元相棒にそっくりであったからだ。





数秒間、Aの青い瞳を見つめた太宰は、スッと手を放して顔を覆った。





「……お願い、仕事をへまして女体化した間抜けな中也だなんて云わないでぇ……そんな相手に心中誘ったとか私もう生きていけない」





太宰の絶望振りに、

これは巫山戯て「五月蝿ぇ、青鯖」なんて云ったら、

車行き交う車道に飛び込みかねない。





Aは一瞬でそう悟った。





『大丈夫です太宰さん。Aです』





「あぁ良かったぁっ！」





そう云って胸を撫で下ろす太宰。





だが、数秒考えて「ん？」と、すぐに顔を向ける。









「いや、良くないよねっ！？ どうしちゃったの？ A君」



『突然女の体になりました。困ってます』



「それならもっと困った顔して。兎に角まず探偵社に行こう」



『でも、バイト――』



「今日のバイトは休みっ！」





こんな状態でもバイトをやろうとするAに、

呆れながら太宰は彼――いや、彼女の手を引いて探偵社へと向かった。



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