【文スト】噂の野良猫娘 ８

　・　 ページ13

.



二年前の交通事故の記事を、探偵事務所に居た社員達も目にしていた。

調べている中で、朝河親子で幸せそうに映る写真を入手した。

二年前の事故が発生する前の物だ。





「確かに、Aに似てる」



「娘に似た少女を偶然見付け、記憶を操作したと云うわけか」



「病院にも確認を取りました。しかし、母親は娘の死亡届を出していないそうです」



「父親の話が出た途端倒れたと云う事は、自分の記憶に誤差が生じているのかもしれん。なぁ太宰」





国木田が視線を向けると、愛読書を顔に被せソファーに寝転がる太宰の姿が見えた。





「おい、聞いているのか？」



「聞いてるよ。このままだと、自分の記憶が正しいか疑う様になる」



「事故の記事と自分が死んだって記事を読んだら、それこそ最悪だねぇ」



「もし朝河サヤが、この記事に辿り着いていたら……」





事務所内が沈黙する。









「そこで、私に良い考えがあるのだけど？」









そう云って手を挙げたのは、ニッコリ笑顔の太宰だった。





それを見て、国木田は眉を顰め、敦は顔を引き攣らせた。





「……太宰さんのあの笑顔」



「何か良からぬ事を企んでいる顔だねぇ」



.

【荒事】良い案→←【発覚】二年前

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す