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端っこの壁に向かって項垂れる。
あの後、困惑の余り棒立ちになって居ると、売店のおばちゃんに不審な顔をされた。
もう狐のお面付けている事は放って置いてっ!
地味に傷付くからっ!
壁に掛かったカレンダーも4年前のものだった。
間違いなく、今ウチが居るのは4年前だ。
原因は、恐らく駄菓子屋で狐のお面を拾おうとした時に現れた黒い穴。
あの穴が、4年前の世界に繋がっていた……。
(……いやいや、真逆そんな)
……でもこれが誰かの異能力だったとしたら?
「時空移動が出来る異能力」とか……うわぁ便利だねぇ……じゃないよ。
どうすんだよ、もう。
4年前って云ったら、ウチまだ10歳じゃん。
杉浦医院に居るじゃん。
探偵社に入社してないじゃん。
行っても皆ウチの事知らないじゃん。
(ど、どうしろってんだよぉぉぉっ!)
ウチは頭を抱えてしゃがみ込んで心の中で叫んだ。
元の時代に帰るにはどうすれば良いんだ?
そもそも帰れるのかな?
このお面も、何か関係があると思うけど、顔に張り付いてやっぱり外れない。
一か八か…………目の前の壁を見る。
両手をついて、息を整え、意を決し、壁に頭突きをした。
堅い壁と木のお面がぶつかる音が大きく鳴った。
ウチはその場にバタリと倒れた。
(ぬおぉぉぉっ!! いってぇぇぇっ!!)
その場で痛みに悶えてゴロゴロ転がる。
通行人の目なんてこの際無視だ。
お面には傷一つ付いていない。
なんて頑丈なんだ、畜生。
涙目になりながらよろよろと立ち上がる。
「――大丈夫か?」
不意に声がしたので振り返ると、咲楽ちゃんの保護者のお兄さんが立って居た。
「壁に頭をぶつけて……何か悩み事か」
いや、間違ってないけど。
「もう大分暗いぞ。早く家に帰らないと」
いや、帰りたいのは山々なんだけど、どうすれば良いのか。
ウチはうーんと顔を俯かせた。
「……もしかして、迷子か?」
ウチの様子を見て、お兄さんが気不味そうに尋ねる。
何時までも無言だったのでお兄さんの方で勝手に解釈したみたいだ。
説明するにも声が出ないし、身振り手振りで伝えるのも難しい。
お兄さんも方も、子供一人残して帰れない様で、どうするかと悩んでいる。
そんな時だった。
「――何してるんだい? 織田作?」
この時代に来て、初めて聞き覚えのある声だった。
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白織 - あけましておめでとうございます!今年も1日から楽しく読ませてもらいました。本年も無理なく楽しくお話を書いてください! (2019年1月1日 21時) (レス) id: a1083074eb (このIDを非表示/違反報告)
凍り姫 - ネコぱふぇさん» とっても面白いです!更新頑張ってください! (2018年12月23日 16時) (レス) id: 7ecdf95431 (このIDを非表示/違反報告)
山吹晋助(プロフ) - リクエスト消化ありがとうございます!最初からドキドキしながら読んでいって太宰さんや織田作との絡みがあってとても楽しく読んでましたw更新頑張ってください! (2018年11月26日 2時) (レス) id: 9dd3548da5 (このIDを非表示/違反報告)
ミカ - ネコぱふぇさん» 成る程判りました!更新頑張って下さい!! (2018年11月20日 22時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
ネコぱふぇ(プロフ) - ミカさん» コメントありがとうございます。申し訳ないのですが、終わりのセラフはアニメ知識しかなく、私が小説を書く程詳しくありません。なので、出来ません。 (2018年11月20日 22時) (レス) id: 3da7122dd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ネコぱふぇ | 作成日時:2018年11月11日 22時